のぞみと別れて病院から帰る途中、彼女の両親とばったり出くわした。お父さんは俺の顔を覚えていたようで、笑顔で手を振ってくれる。その隣で会釈をしてくれた女性が、のぞみのお母さんなのは知っていた。以前、家族写真を見せてもらったからだ。

ゆっくり話をしたい気もしたが、ご両親はこれから見舞いに行くところだろうから、軽く挨拶をして済ませる。のぞみのところはお母さんも柔和な雰囲気だ。うちの両親とは違って、雰囲気の似た夫婦だと感じた。


帰り道を歩きながら、のぞみとのやり取りを思い返す。「春になったら」、実際にはそれを考え始めると止まらない。春になったらのぞみの両親とゆっくり話をしてみたい、というのも今さっき追加された。父さんがこの間言っていたように、こうやって世界が広がっていくのだろう。今までは狭い世界、狭いつながりで構わないと思っていたが、これからはもっと広げていきたい、なんてことも考える。
ここしばらくは近い未来のことしか頭になかったが、その先の将来のことも改めて思案する必要があった。