それから少しの間、誕生日の話で盛り上がった。のぞみの好きな俳優と俺の誕生日が一緒らしい。いいなーと羨ましがられたが、俺はそんなに思い入れがある俳優ではないので、特段嬉しくも何ともない。ただ、誕生日ひとつで表情をころころ変えるのが可愛かったので、それはよかった。
「でもさ、春になったらしたいこと、いちばん大事なのがまだ出てないよね」
話が落ち着いてきた頃、のぞみが言う。彼女の言わんとしてることは分かった。俺たちはまだ肝心な部分を口にしていない。
「せーので言お」
のぞみの提案に俺はうなずいた。この望みを口にすることは、俺にとって大きな意味のあることのように思える。叶うことのない願望を口にするのは嫌いだ。だからこそ、この望みは声に出して言いたかった。
「せーの」
小さく息を吸う。口を開いた瞬間、彼女と目が合った。優しくて暖かい目だ。
「春になったらのぞみに会いたい」
「春になったら冬くんに会いたい」
二人の声がきれいに重なった。
きっと、今みたいな瞬間を幸せと呼ぶのだろう。この先、実際にはどうなるか分からない。それでも俺は今、幸せだった。のぞみが前に言っていたことを思い出す。今感じてる幸せは、辛い現実を変えてくれるようなものではないけれど、辛い現実に負けるようなものではない。その通りだと思った。
「でもさ、春になったらしたいこと、いちばん大事なのがまだ出てないよね」
話が落ち着いてきた頃、のぞみが言う。彼女の言わんとしてることは分かった。俺たちはまだ肝心な部分を口にしていない。
「せーので言お」
のぞみの提案に俺はうなずいた。この望みを口にすることは、俺にとって大きな意味のあることのように思える。叶うことのない願望を口にするのは嫌いだ。だからこそ、この望みは声に出して言いたかった。
「せーの」
小さく息を吸う。口を開いた瞬間、彼女と目が合った。優しくて暖かい目だ。
「春になったらのぞみに会いたい」
「春になったら冬くんに会いたい」
二人の声がきれいに重なった。
きっと、今みたいな瞬間を幸せと呼ぶのだろう。この先、実際にはどうなるか分からない。それでも俺は今、幸せだった。のぞみが前に言っていたことを思い出す。今感じてる幸せは、辛い現実を変えてくれるようなものではないけれど、辛い現実に負けるようなものではない。その通りだと思った。