「冬はなんか変わったこととかないの?」

もうじき家に着く、というところで、そう聞かれた。母さんにはある程度いろいろ伝えているが、父さんには話していないことも多い。のぞみのこともそうだ。細かいことは母さんにも言っていないが、なんとなく察されている気がする。母さんが彼女の話をしていないのであれば、父さんは何も知らないはずだ。

「まあ、いろいろありはするけど」

なんて言っていいのかわからなくて、曖昧な返事になる。好きな人がいるんです、みたいなことを言うのも変だし、その子の余命の話なんて久々に会ったタイミングでするものではないだろう。

「え、なになに。気になる」
「たいした話じゃねえよ」

わくわくした顔を横目に、わざと素っ気なく返す。ちょうど家に着いたので、話を打ち切ってしまおうと思った。父さんは俺の返答に少しむくれたが、それ以上聞いてはこなかった。別に絶対に話せないようなことではない。ただ、恋愛の話をしたら浮かれそうだから気が引けた。