それからしばらくは名前トークが続いた。芸能人の名前にまで話題が及んで楽しかったのだが、雨が強くならないうちに帰宅することにした。今日は夕飯を作る当番なので、買い物もしなくてはいけない。
「そろそろ帰ろうかな」
立ち上がりつつそう伝えると、待って、と引き止められた。ベッド横のテーブルの上に置かれていた紙袋を渡される。中身は先日のデートのときに貸したジャケットだ。すっかり忘れていた。
「ちょっと甘めの香りになっちゃったけど」
そう言ってのぞみがはにかむ。確かに花のような香りがした。
「のぞみのにおいだ」
無意識に、そんな言葉をこぼしてしまった。我ながら気持ち悪い発言である。はっとして口をつむぐがもう遅い。一度出てしまった言葉を消すことはできない。
「悪い、変なこと言った」
謝った方が逆に気持ち悪さが増す気もするが、それ以外に取り繕う方法が分からないので、とりあえず慌てて謝る。
「貸してくれたとき、冬くんのにおいだって私も思ったよ」
のぞみはそう言ってくすくすと笑った。顔が赤くなるのが自分でも分かる。それと同時に、俺のにおいはどんなだろうと思った。変なにおいじゃないことを願うしかない。
「そろそろ帰ろうかな」
立ち上がりつつそう伝えると、待って、と引き止められた。ベッド横のテーブルの上に置かれていた紙袋を渡される。中身は先日のデートのときに貸したジャケットだ。すっかり忘れていた。
「ちょっと甘めの香りになっちゃったけど」
そう言ってのぞみがはにかむ。確かに花のような香りがした。
「のぞみのにおいだ」
無意識に、そんな言葉をこぼしてしまった。我ながら気持ち悪い発言である。はっとして口をつむぐがもう遅い。一度出てしまった言葉を消すことはできない。
「悪い、変なこと言った」
謝った方が逆に気持ち悪さが増す気もするが、それ以外に取り繕う方法が分からないので、とりあえず慌てて謝る。
「貸してくれたとき、冬くんのにおいだって私も思ったよ」
のぞみはそう言ってくすくすと笑った。顔が赤くなるのが自分でも分かる。それと同時に、俺のにおいはどんなだろうと思った。変なにおいじゃないことを願うしかない。