その後は、しおりの話から飛んで、小説の話をした。のぞみの好きな作家が新刊を出したらしく、彼女の枕元には分厚い本が一冊置かれている。
「なんか、切ないんだけど、暖かいんだよね」
もう読み終わったというので、感想を尋ねると、そんな言葉が返ってきた。
「主人公がね、人を探しながら旅をするの。各地でいろんな人と出会って、たくさん話をして。それで、主人公の言葉がみんなを救うんだ。たくさんの人に希望を与える、みたいな」
ざっくりとしたあらすじを聞かせてくれる。本の表紙を見ると、海岸の絵の中に男の人が描かれていた。彼がその主人公なのだろう。彼だけしか描かれていないということは、探し人とやらは見つからなかったのだろうか。
「私もこうやって、誰かに希望を与えられるような人間だったらよかったのに……なーんて考えちゃったりしてさ! のぞみって名前だし!」
急な発言に驚いてのぞみの顔を見る。冗談めかして言った割に、その顔は真剣だった。きっと小説は面白かったのだと思う。しかし、それとは別に、内容を自分の現状と比べてしまって、もやもやする瞬間がある感覚は分かる気がした。
何と答えたらよいか迷う。そんなことないよ、と言いたい。実際、俺はのぞみに救われている。ただ、ここでそう言ったとして、嘘っぽく聞こえてしまう気がした。それに、そんな言葉よりも、もっと俺にしか言えないことを伝えたい気もした。
「……名は体を表す、って嘘だよなぁ」
考えた結果、最初に出た答えはそれだった。なんのフォローにもなってない発言に、のぞみが悲しむかもしれないと一瞬思ったが、こんなこと以外に何を言っていいのか分からなくなっていた。
「なんか、切ないんだけど、暖かいんだよね」
もう読み終わったというので、感想を尋ねると、そんな言葉が返ってきた。
「主人公がね、人を探しながら旅をするの。各地でいろんな人と出会って、たくさん話をして。それで、主人公の言葉がみんなを救うんだ。たくさんの人に希望を与える、みたいな」
ざっくりとしたあらすじを聞かせてくれる。本の表紙を見ると、海岸の絵の中に男の人が描かれていた。彼がその主人公なのだろう。彼だけしか描かれていないということは、探し人とやらは見つからなかったのだろうか。
「私もこうやって、誰かに希望を与えられるような人間だったらよかったのに……なーんて考えちゃったりしてさ! のぞみって名前だし!」
急な発言に驚いてのぞみの顔を見る。冗談めかして言った割に、その顔は真剣だった。きっと小説は面白かったのだと思う。しかし、それとは別に、内容を自分の現状と比べてしまって、もやもやする瞬間がある感覚は分かる気がした。
何と答えたらよいか迷う。そんなことないよ、と言いたい。実際、俺はのぞみに救われている。ただ、ここでそう言ったとして、嘘っぽく聞こえてしまう気がした。それに、そんな言葉よりも、もっと俺にしか言えないことを伝えたい気もした。
「……名は体を表す、って嘘だよなぁ」
考えた結果、最初に出た答えはそれだった。なんのフォローにもなってない発言に、のぞみが悲しむかもしれないと一瞬思ったが、こんなこと以外に何を言っていいのか分からなくなっていた。