少しして、のぞみが戻ってきた。折りたたんだレジャーシートを抱え、俺の貸した服をワンピースの上に羽織っている姿は、なんだかちょっと不格好である。しかし、それが逆に俺の心をくすぐったことは言うまでもない。


しばらく車に乗って、朝のように駅で解散した。窓を開けて手を振ったのぞみは、名残惜しそうな顔をしていた。たぶん俺も同じ表情だ。だって、最後かもしれない。こうして外で彼女を見ることができるのは。そうならないように願うこと以外、俺にできることはないのだから。

「ばいばい」
「……ああ、また」

別れの言葉が、冷えた空気に消えていく。春の暖かな空気が待ち遠しかった。

できるだけゆっくり時間が進んでほしい。本当は春になんてずっとならないでほしい。それでも、これから残された時間、彼女には暖かい世界にいてほしいと思った。


駅からの帰り道、回り道をして神社に寄った。何の神様が祀られているんだか覚えていないが、とにかくじっとしていられなかったのだ。人生で初めてお札を賽銭箱に入れる。願いはただ一つだった。