公園を出ると、既に車が停まっていた。俺たちに気づいたのか、中からのぞみのお父さんが出てくる。俺は、のぞみと繋いだままだった手をパッと離した。寂しかったが仕方がない。ここで堂々とできるほどの余裕はなかった。


「あっ!」

車に乗る直前になって、のぞみは思い出したように声をあげた。俺とお父さんは同時に、彼女の方に顔を向ける。

「レジャーシート敷きっぱなしにしてきちゃった……ごめん、待ってて」

申し訳なさそうな顔をするから何かと思えば些細なことで安心する。俺も気づかずにここまで来てしまったので同罪だ。代わりに行こうか、と声を掛けたが、のぞみはそれを断って一人で取りに行ってしまった。



「……冬君」

のぞみの姿が見えなくなってから、少しためらい混じりに名前を呼ばれた。一緒の方向を見ていたはずの目がこちらを向いている。

「君に言いたいと思ってたことがあるんだ」
「はい」

俺も同じ気持ちでいた。のぞみが家族と過ごせる貴重な時間を俺がもらっている。その感謝を伝えなくてはいけない。お父さんは、一度公園の方に視線を移した後、慎重に言葉を続けた。