のぞみは俺の答えに、大きくうなずいて笑った。無邪気な笑みだった。

彼女の決意はかけがえがなくて、尊くて、でも多分難しいものの気がした。思いだけじゃ変えられないものがあるのだと、俺ものぞみも身をもって知っているのだから。それでも、俺とまた春にここに来たいと思ってくれたこと、それ自体がとても嬉しかった。


「……くしゅん!」

俺の思考を遮るように、可愛らしい声が響く。今日は少し肌寒い。街を歩く人たちの装いも、変化してきたところだ。華奢なうえにワンピース1枚しか着ていないのぞみは、身体を冷やしてしまっていることだろう。

「春まで生きるなら、風邪引いたりしてられないな」

自分のジャケットを彼女の肩にかけてそう言う。薄手ではあるが、多少は暖まるだろう。のぞみはジャケットに顔を半分うずめて、あったかい、と声を漏らした。愛らしい姿だった。