のぞみは少し大きめのその唐揚げを、口いっぱいに頬張った。膨らんだ頬が愛らしい。俺はといえば、味はどうかと緊張して、サンドイッチを持ったまま固まっていた。

「おいしい!」

もぐもぐとした後、彼女はそう叫んだ。妙にテンションが高い。とりあえずほっとして、俺もサンドイッチを口に運ぶ。それを見て、のぞみは次にサンドイッチを手に取った。



「はぁー、おいしかった! おなかいっぱい!」

二人で全部食べきると、結構満腹になった。のぞみも満足してくれたようで安心する。

「それにしても、冬くんそんなに料理上手ならもっと早く教えてくれればよかったのに」

弁当箱をしまう俺に、のぞみはなぜか少し悔しそうな顔でそう言う。よく分からないが、その顔も可愛かったので、とりあえず曖昧に謝って濁した。


それからしばらくは、静かな時間が流れた。嫌な沈黙みたいなものではなく、落ち着いた穏やかな静けさだった。

俺はその場に座ったまま空を眺めていたし、のぞみはその隣で木々を眺めているようだった。視線を空から移し、横目で彼女を見てみる。考え事をしているようだが、何を考えているのかまでは分からない。俺はまた視線を戻した。デートなのに無言の時間が続くのはちょっともったいない気もしたが、それもいいなと少し思った。