「お昼ご飯、冬くんが用意してくれたんだよね? ちょっと早いけど食べちゃう?」

少しだけそのまま景色を見ていたのぞみが、俺の方を向いて笑う。いたずらっ子のような笑みだ。

「そうだな、あっちにベンチがあるからそこで食うか」
「レジャーシート持ってきてるからここで食べない?」

俺がベンチを指さすと、彼女は真下の地面を指さした。女の子を床に座らせるのは、なんとなく躊躇われたが、既にレジャーシートをバッグから取り出しているのぞみを止めるのも悪い気がして、敷くのを手伝った。

2人が楽々座れるくらいの大きなシートに、作ってきた弁当を広げる。昨日の夜から仕込んだので、シンプルなものではあるが自信はある。

「え! すごい美味しそう! これ冬くんが作ったの!?」

きらきらと輝いたのぞみの顔が眩しい。喜んでくれると嬉しいと思っていたが、ここまでとは思わなかった。これだけ喜んでもらえるのであれば、毎日でも作ってあげたいくらいだ。

「そうだけど……別にそんな大したもんじゃねえから」

照れてそっけない返しになった。しかし、そんなことは意にも介さず、のぞみはわくわく顔で手を拭いている。もしかしたら、俺が料理をできるということにギャップを感じているのかもしれない。


「いただきます」

2人で声を合わせる。のぞみは最初に唐揚げを手に取った。カフェの店長を務める叔母さんが教えてくれたレシピなので、特に自信のある一品だ。ただ、のぞみの口に合うかの確証はなかった。