答えたのはのぞみだった。例によって、こういう時の返しはのぞみの方が上手だ。
「ううん、付き合ってはいないよー」
笑顔を崩さずにのんびりとそう言う。
「おねえちゃんはおにいちゃんのこと好きじゃないの?」
女の子は重ねて聞いてきた。子ども特有の遠慮のなさに内心苦笑しつつも感心してしまう。
「んーん、おねえちゃんはおにいちゃんのこと好きだよ」
「えー、じゃあ、おにいちゃんがおねえちゃんのこと好きじゃないの?」
のぞみの言葉にこっそり照れていた俺の方にも質問が飛んでくる。
「いや、お兄ちゃんもお姉ちゃんのこと好きだけど……」
さすがにのぞみほど子供に合わせたしゃべり方はできなかったが、なんとか答えた。女の子と一緒にこっちを見たのぞみは少しにやにやしている。さしずめ、俺が子供に困らされてるのが面白いのだろう。自覚はある。
「両思いじゃん! なんで付き合わないのー?」
「そうだよー、両思いなの。でも大人にはねいろいろあるからね」
「いろいろ?」
「うん、いろいろ」
のぞみのふわっとした答えに女の子は不思議そうな顔をした。まだ何か聞きたいみたいだったが、友達に呼ばれた彼女は手を振って去っていった。
「俺たち大人なの?」
女の子が去ってしんとしたところでなんとなく聞いてみた。
「私は大人にはいろいろあるって言っただけで自分が大人だとは言ってないから」
「はは、なんだそれ」
「ふふ」
俺はのぞみに付き合おうとは言わなかったし、のぞみも言わなかった。それはやっぱりのぞみの言うように、いろいろあるからだ。なんで付き合わないのかのぞみに話したことはなかったが、今の女の子とのやり取りでのぞみも俺と同じ気持ちなのだと感じた。
「ううん、付き合ってはいないよー」
笑顔を崩さずにのんびりとそう言う。
「おねえちゃんはおにいちゃんのこと好きじゃないの?」
女の子は重ねて聞いてきた。子ども特有の遠慮のなさに内心苦笑しつつも感心してしまう。
「んーん、おねえちゃんはおにいちゃんのこと好きだよ」
「えー、じゃあ、おにいちゃんがおねえちゃんのこと好きじゃないの?」
のぞみの言葉にこっそり照れていた俺の方にも質問が飛んでくる。
「いや、お兄ちゃんもお姉ちゃんのこと好きだけど……」
さすがにのぞみほど子供に合わせたしゃべり方はできなかったが、なんとか答えた。女の子と一緒にこっちを見たのぞみは少しにやにやしている。さしずめ、俺が子供に困らされてるのが面白いのだろう。自覚はある。
「両思いじゃん! なんで付き合わないのー?」
「そうだよー、両思いなの。でも大人にはねいろいろあるからね」
「いろいろ?」
「うん、いろいろ」
のぞみのふわっとした答えに女の子は不思議そうな顔をした。まだ何か聞きたいみたいだったが、友達に呼ばれた彼女は手を振って去っていった。
「俺たち大人なの?」
女の子が去ってしんとしたところでなんとなく聞いてみた。
「私は大人にはいろいろあるって言っただけで自分が大人だとは言ってないから」
「はは、なんだそれ」
「ふふ」
俺はのぞみに付き合おうとは言わなかったし、のぞみも言わなかった。それはやっぱりのぞみの言うように、いろいろあるからだ。なんで付き合わないのかのぞみに話したことはなかったが、今の女の子とのやり取りでのぞみも俺と同じ気持ちなのだと感じた。