「おー、結構広いね!」
のぞみは辺りを見回して言う。楽しそうに俺の方を振り返ってくる姿を見て微笑ましく思った。現状彼女はインドア派だが、病気のことさえなかったらアウトドア派になってたかもしれない。
「でも広い割にはあんまり人いないね。なんでだろ」
「近くにもっと大きい公園があんだよ。そっちはフリーマーケットとかイベントとかもやってるみたいだし、遊具も多いらしいからそっちに人が集まるんだろうな」
「じゃあ、こっちは結構穴場なんだ! さすが冬くん、いい場所知ってるね」
「桜の名所とかネットで調べても向こうの公園が出てくるからこっちは確かに穴場なんだよなあ。俺も偶然見つけただけだし」
「入口もちょっと分かりにくい感じだったもんね……あ、ボールが」
おしゃべりをしていると、ころころとボールが転がってきた。ボール遊びをしていた子どもたちの投げ損じがこっちに来たようである。小学生くらいの女の子が走って取りに来る。
「はい、どうぞ」
のぞみはスカートを抑えてしゃがみ、ボールを拾ってあげた。女の子へ向けた優しい笑顔と上品な仕草にドキリとする。のぞみがこうやって俺以外の人に笑顔を向けてるのを見ることは普段ないため、知らない一面を見たような気がした。子どもと接する彼女はいつもよりずっと大人っぽくて、つい見惚れてしまった。
「ありがとう! ……おねえちゃんとおにいちゃんは付き合ってるの?」
子供の無垢な質問は、時として爆弾だったりする。別に聞かれて特段困ることではないのだが、なんとなく気まずい。好きあってはいるけど、付き合ってはいない状態だから答えに窮してしまった。