のぞみは俺の言葉を聞くと、驚いた表情で振り返った。二つ結びされた髪と茶色のワンピースがそれに合わせて揺れる。練習したと言っても、本心からの言葉には違いない。今日ののぞみは少しメイクをしていることもあって、本当にとても可愛かった。

「……なん、え、ありがとう?」

明らかに動揺した彼女は、曖昧な返事をした。俺も自分がそういうセリフをさらっと言うタイプではないと分かっているので、まあ妥当な反応だと思う。

「よし、じゃあ行くか」

未だに困惑の表情が浮かぶのぞみにそう言って笑いかける。彼女は少しなんとも言えないような顔をしたが、それからいつものように笑い返してくれた。愛らしい笑顔を見てつい口元が緩む。のぞみにはバレないようにグッと口元に力を入れて、どうにか誤魔化した。


「冬くんもさ、今日いつも以上にかっこいいね。服もオシャレだし」
「まじ? ありがとう」

歩きながらのぞみが褒めてくれた。正晴と一緒に服を買いに言った甲斐がある。髪も少しだけだがいじったので、褒めてもらえると純粋に嬉しい。

「そういえば前から思ってたんだけど、冬くんって何か運動やってる? 結構筋肉あるよね?」
「ああ、まあ鍛えてはいる。スポーツとかやってるわけじゃねえけどな。走ったりとか筋トレとか体動かすの好きなんだよ」
「運動得意そうだもんね。私は運動だめだなぁ。体力ないし」
「あー、確かにのぞみは運動苦手そう」

のぞみが運動苦手なのは病気のせいかもしれないが、そこには触れないで冗談めかして言う。そんな話をしている内に、公園の広いところに出た。特別人が多いわけではないが、親子連れやカップルが何組かいた。