「お、もうそろそろかな? 多分あそこの信号曲がってすぐだと思うんだけど」
しばらく車を走らせると、お父さんがそう言った。確かに見慣れた風景である。言っていた通り、信号を曲がったところに公園の入口があり、俺らはそこで降ろしてもらうことにした。
「冬君、のぞみのことを頼むよ。これ僕の連絡先だから、何かあったら連絡して」
降りる直前、連絡先を書いたメモを渡される。娘を預ける親の気持ちを確実に理解することはできないが、ちゃんと信頼に従わなくてはいけないと感じた。
公園に足を踏み入れると、秋めき始めた木々がいい雰囲気を出していた。いつも桜の季節にしか来なかったが、これからは秋に来るのもよいかもしれない。のぞみは外に出られたのが嬉しいのか、大きく息を吸って伸びをしている。
「のぞみ、今日はいつも以上にかわいいな」
何度も練習した言葉を口に出してみる。今日は絶対にかっこいい俺でありたいと思った。