「そんで、デートの服の話だよね。まあ前回と同じ系統でいけば間違いはないと思うよ」

正晴の言葉に俺は頷く。自分でもそうだと思う。ただ、問題は俺がそういう服を持っていないということだ。

「あー、でも、前回は俺が貸したんだっけか。また貸したげてもいいけど、どうする?」

「いや、また借りるのは申し訳ねえし、自分で買うよ。もうそろそろ靴も買い替えに行くつもりだったし」

正晴からの言葉はありがたかったが、さすがに二度も借りるのは気が引けた。ただ、買いに行くにしても、どの店に行くのがいいのかすらわからないので、正晴に教えてもらおうと思ったのである。

「ん、わかった。そしたら冬さあ、明日の午後空いてる? 明日は俺午前授業だから、空いてるなら一緒に買いに行こ」
「おー、空いてる。だけどいいのか? 高校の友達と遊んだりとかしなくて」

正晴が一緒に来てくれるのは嬉しいし、俺にとっての友達は正晴しかいないんだから離れていかれては困る。そうは言っても、正晴がどうしてそこまで俺に時間を割いてくれるのかはずっと疑問だ。高校の友達と遊んだ話などほとんど聞かない。

「別にいいよ、冬はそうゆうこと気にしないで。俺がやりたくてやってるんだから。てか、だっさい格好でデートしたくないんだったら大人しく俺の言うこと聞きなね」

……そう言われると何も答えようがない。そもそもこちらから相談しているのだ。正晴に従うべきだろう。それに正晴の交友関係を知らない俺が口を突っ込む話ではないように感じた。


かくして俺は正晴に服を見繕ってもらうこととなった。前回と同じ系統でまとめられた秋服は少し大人びていて、なんだか背伸びをしているように感じたが、それがいいのだと正晴が言うので従っておく。靴も動きやすくてファッション性もあるものを選び、デートへの準備を整えた。

ちなみに、喫茶店で聞き耳を立てていた叔母さんにはデートのことが筒抜けで後々からかわれ、女の子をキュンとさせるテクニックを伝授されたが、これがどこまで信用できるものか分からなかったのでおおよそ聞き流しておいた。


そうこうして、俺とのぞみの二回目かつ多分最後のデートは幕を開けた。