「だから今、私すっごい幸せ。恋って思ってた以上に素敵なことなんだね」
「……同感」
素敵なんて思っても言えねーな、なんて考えながら同意を示す。照れゆえに声が小さくなったのは仕方の無いことだ。
のぞみは俺の反応にか少し笑って、それから思い出したように、握りっぱなしだった俺の手を解放した。安心したような寂しいような感覚がちょこんと顔を出したが、無視しておく。
「そーいえば、のぞみはさっき何を言おうとしてたんだ?」
そのまま無視ついでに、話の転換を図った。
この糖度の高すぎる空間は、甘いものが好きな俺でもキャパオーバーだ。糖分の摂りすぎは体に悪い。
「あー、さっき被っちゃったときのやつ?」
「そう、それ」
「実は一つ朗報があってね」
あっさり転換されてくれた彼女は、愉快そうな表情をする。いたずらっ子のような笑み。いつもよりも小悪魔度一割増しだ。
「な、なんと! 一時退院の許可が降りましたー!」
内容よりも先に、彼女がパチパチと手を叩く音が頭に響いた。
いや、マジかよ。
「というわけで、第二回デート決行しましょう!」
満足気な顔で突き出されたピースを、俺は驚いて見るしかなかった。