その瞬間、俺の体はボンッと音をたてて爆発した。嬉しいとか恥ずかしいとかを、あっさり飛び越えていってしまう。


なんだこれ。なんだこの気持ちは。

のぞみが泣いてしまったのもわかる。胸が熱くて、体も熱くて、頭は働かなくて。


ああもう、駄目だ。勝手に目元がじわりと滲んでくる。
だが、さすがにここで俺が泣くのはダサすぎるだろう。気づかれないようにゆっくりと息を吐いて、なんとか涙を止めた。



「私ね、実はこれ初恋なんだ」

動揺してる俺を見抜いてか、さらに追い打ちをかけるようにのぞみは言う。多分計算済みなのだろう。わかってて俺を追い詰めてる。それでも、好きな人からされるのなら別に構わないと思った。


「ずっと、漫画とか小説とかの恋に憧れてた。でも現実は漫画みたいにいかないってわかってたから、恋なんてできないって決めつけてたんだ。そりゃそうだ。私には友達すらいないんだもん」

のぞみは自虐的にそう言ってから、ぱっと表情を明るくした。

「でも、冬くんと出会った! 最初は不思議な子だなって思ってただけだったけど、優しくて楽しくて。いつの間にか冬くんが来るのを心待ちにしてる自分がいた。これが恋なんだって、根拠はないけど確信したの!」

いつもよりまっすぐで綺麗な瞳がキラキラと輝く。

俺がのぞみと初めて会った時、彼女の瞳はこんなに美しくはなかった。俺との出会いが、俺と過ごした期間が、彼女を変えたのだと思った。自惚れなのは百も承知だ。だが、それでも嬉しいという気持ちは止まらない。ただただ嬉しくて、堪らなく愛おしかった。