「違うの! 冬くんが謝らないで。嫌だったとかじゃなくて、その……ただ嬉しくて」

手の甲で流れ続ける涙を拭いながら言う。その姿はとても綺麗で愛おしい。



嬉しい、たったその一言だけで報われた気がした。

俺のやったことは間違ってなかったんだって。これで良かったんだって。

そんなことを証明しようとするのは馬鹿らしいけど、そう強く感じる。



俺は、涙を拭う彼女の手をそっと頬から離させ、代わりにその美しい雫を掬いあげた。柔らかい頬と温かい涙の感触が、これが現実だと語っている。

初めて感じるほどの強い愛情に、ついもっと触れたくなる。しかし、俺の理性は結構厳しくて、それを許してはくれなかった。まあ、これ以上のぞみを驚かせるわけにもいくまい。
このことを正晴に伝えたら、またピュアだと笑われそうだけど、そんなこと今はどうでもよかった。





「あのね、冬くん」

そんなに経たない内にのぞみは泣き止むと、俺の手をきゅっと握って言った。その瞳はまだ潤んだままだったが、強い意思も感じさせる。

握られた手からは彼女の熱が伝わってきて、俺の熱と混ざっていく。それが不思議で、嬉しくて、恥ずかしいはずなのに、さっきよりも落ち着いているのはなぜなのだろうか。



のぞみは、はにかみつつ微笑んだ。

「……私も好きだよ、冬くんのこと」