お互いの、相手に向けた視線がぶつかる。のぞみも、のぞみの瞳に映る俺も驚いた顔をしていた。


「あ、ごめんね! 冬くん先どうぞ」

すぐに笑ってそう言ったのは、もちろんのぞみ。こういうときの対応は彼女に叶わない。俺かっこ悪いなぁと少し落ち込みつつ、言葉に甘えさせてもらうことにした。



「俺さ、のぞみに伝えたいことがあるんだけど聞いてくれるか?」

俺は真剣に、のぞみの目をしっかり見て尋ねた。何かを感じ取ったのか、こくりと頷いた彼女の顔も真剣そのものだ。

静かになった病室に、俺の心音だけが響いている。




「……俺は、のぞみのことが好きだ」

そんな空間にありったけの想いを込めた言葉を落とした。飾りのない、単純で、まっすぐな想い。

口に出してみれば一瞬で、まるで幻のよう。本当に言えたのか、自分でも分からなくなる。


のぞみは最初びっくりしたように固まり、それからぽろぽろと涙を流し始めた。彼女の泣き顔を正面から見たのは初めてだ。

「えっ、あ、ごめんな。急にこんなこと……」

俺はギョッとして謝る。言わない方が良かったんじゃないか、なんて今更な後悔が胸の端を突いた。

だってそうだろ。俺はのぞみを泣かせたいわけじゃないのに。


だが、のぞみは大きく首を横に振った。