「冬くんは考えすぎじゃん?」

浅沼くんに軽い感じでそう言われて、俺はとっさに彼を見上げた。少し高い位置にある顔が、優しく微笑んでいる。


「思ったことを言うだけで十分っしょ、そんなの。かっこつけたり、形式ばったりしなくてもさ。むしろ等身大の言葉の方がすーっと入ってきやすいと思う。正解なんて、そんなもんないない!」

大きな身振りを付けながらの彼の言葉に、驚きと感動が入り交じった。心が一気に楽になる。

難しく考える必要などなかったのだ。

のぞみのことが好き。
のぞみのことが大切。

それ以上も以下もない。ただそれを伝えればいいだけで。


「ありがとう。なんか、うん、すげー安心した」

驚きの醒めないまま言うと、浅沼くんはぐっと親指を立てていたずらに笑った。

「いいっていいって! 冬くんは冬くんのやりたいようにやりなよ」

その優しさに軽くうるっときて、慌てて笑い返す。いつの間にか涙腺が随分と緩くなっていたみたいだ。


「わかった。俺なりに頑張ってみるよ」

俺の返事に彼は嬉しそうに大きく頷いた。

本当に浅沼くんは優しい。俺は、ありがとう、と心の中でもう一度呟いた。