「あー。わかんねえなら別にいーや」

「えー、そう言われると逆に気になるんだけど」

俺の言葉に少しムッとした表情の浅沼くんは、同い年くらいにしか感じられなかった。

みんなから愛される人というのは、彼のような人なんだろうな、などと思ってみたりする。


「じゃあ、自分で考えてみてよ」

俺は意地悪心が働いて、そう言って笑った。
えー、とぼやきながらも浅沼くんは真剣な顔をして考えている。時々聞こえてくる唸り声が少しおかしい。



「あ! そういえばさ!」

そんな声とともに彼が顔を急に上げたのは、それから数分後のこと。あまりにも勢いがよかったのでつい仰け反ってしまった。


「な、何?」

「冬くん、このあと告白するんだったよね!」

その話か、と納得すると同時に、忘れかけていたことが頭に蘇ってきた。緊張復活。

実をいえば、のぞみに伝える言葉すらまだしっかりと決まっていない。バイトが終わったら直行すると約束したのでゆっくり考えている暇などないし、だからといって告白を延期したりなんかしたら男が廃る。


「なんて告白するの?」

悪意の欠片もなさそうな笑顔の質問に、俺は低く呻いた。

「うぅ、そ、それはまだしっかりと決まってなくて……」

「え!? だってこのあと相手の女の子のところ行くんだよね? 考えてる時間もうなくない?」

浅沼くんの正論がここまで胸に刺さったのは初めてだ。というか、彼がそんなまともなこと言っているのを聞くの自体初めてな気がする。


「やっぱそうだよな。それはわかってるんだけど……。俺こういうの慣れてねーから、どう言うのが正解なのかわかんなくて」

最後が尻すぼみになっていくのが、自分の言葉ながら情けない。不慣れなのは仕方ないが、もっと対処のしようがあったんじゃないかと後悔する。のぞみのことを大切に思っているなら尚更だ。