「で、今日のいつすんの? てか、冬くん何時上がり?」

浅沼くんはヘラっとした笑顔に戻って聞いてきた。

「今日は一時上がり。告白はその後な」

「お! 俺と一緒だ! じゃあ、午後に待ち合わせなんだ?」

俺はこくんと頷く。と、その時ホールからお客さんの呼ぶ声が聞こえた。追加オーダーのようだ。


「冬ー、お願い」

「おっけ」

叔母さんの声に返事をして、オーダーを取りに行く。そこで話は一旦途切れた。






「お疲れ様っしたー」
「お疲れ様でーす」

やっとバイトが終わった。浅沼くんと一緒に店を出る。病院と浅沼くんの家は同じ方向なので、必然的に二人で並んで歩き出した。


「秋になったのにまだあっついよね」

来ているTシャツの首元をパタパタと動かしながら、浅沼くんが言う。額には少し汗が滲んでいるようだ。

俺は確かになぁ、とのんびり頷いて、手で顔を扇いだ。目に見える景色は秋色へ一直線なのに、暑くなったり寒くなったり気温は変動が激しい。


「あーあ、早く冬にならないかなー。冬くんもそう思うよね?」

浅沼くんは暑さに辟易したという感じで聞いてきた。

その何気ない言葉に俺は心臓をぎゅっと掴まれる。


冬なんて来てほしくない。

眠ってしまう冬なんて。のぞみとだってもう長くはいられないのに。

それが本心だ。そう叫びたかった。でも言えるわけがない。


彼は俺の事情を知らずに言っているのだ。だから仕方がない。悪意がないのに責めるわけにはいかないだろう。

しかし、それでも辛いものは辛い。何も聞かなかったかのようにやり過ごせるほど俺は強くないのだから。