「で、告白とかしたりすんの?」

浅沼くんは声を抑えて俺に尋ねた。

「そのつもりだけど……」

「マジでー!? すごいじゃん! いつするつもりなの?」

「……今日」

「うぇ!?」

浅沼くんの不思議な声が響いた。俺はしぃーっと人差し指を口に当てる。彼は基本静かにするということが苦手なのだ。


「え、ちょ、ちょっと聞いてもいい? 冬くんの好きな子って……俺、じゃないよね?」

「……は?」

突然の発言に驚いて顔を上げると、浅沼くんは困ったような顔をしていた。

「あー、それならごめん。俺そういうのには偏見ないけど、俺は女の子が好きだから! 冬くんの気持ちは受け取れない」

いや、なんて勘違いしてんだよ。

俺は無言で浅沼くんの腹を殴る。彼は予期せぬダメージに呻いた。

「うぅ、だからごめんて。フラれたからって殴らなくても」

「今すぐ黙んねえともう一発殴るからな」

「ごめんなさい」

「俺の好きな子は女の子だから。仮に恋愛対象が男だとしても浅沼くんは絶対ないわ」

「ひどい!」

半泣きになってしまった浅沼くんに、心の中で笑いが漏れる。なんだかんだこの人なりのエールかな、なんて思ったりもする。まあ、十中八九アホなだけなんだろうけど。