「おはようございまーす」

そう言いながら眠そうに欠伸をして店内に入ってきたのは、大学生バイトの浅沼君だ。明るめの茶髪に大きなピアスといかにもチャラい。正晴とは違うタイプのイケメンである。


「あれっ、まだ準備終わってないんすか!? もう開店十分前ですけど」

浅沼くんが驚いたように言う。いつもなら開店の十分前には準備を終わらせて、お客さんを待つだけになっている。言い合いに夢中になっていたせいで二人とも忘れていたのだ。

「やばいやばい! 浅沼くんすぐ着替えて食器の準備して! 冬はテーブル拭き終わったら調味料の準備!」

「了解っす」

「了解」

慌てた叔母さんの声に俺たちは一緒に返事をして、各々動き出した。


その後、開店してからは休む間がなく、開店から一時間半ほどするとやっと落ち着いた。店内には何組かのお客さんがいるが、追加オーダーやトラブルなどの心配はなさそうだ。俺たちは揃って裏に行って、ふぅと息をついた。


「あー、疲れたぁ」

「日曜、人多すぎじゃね」

「まあ繁盛する分にはいいんだけどさあ。なんでか最近疲れるのが早くって」

「歳だろ」

「うるさいガキ」


客に聞こえないようにひそひそと話す。全員の顔から疲れが滲み出ていた。