私は頭上に広がる清々しい青を褒めたたえ、涼しい風に身体を打たれながら一人RVちゃんに語りかけるのだ。

「夏はいいなあ」

 普段走ることのない道に差しかかると、やはり赤信号でも機嫌は良いままだ。

 ジャケットの袖をぞんざいにめくるものだから、帰宅する頃には、すっかり肌が焼けてしまっている。

 南部は寄り道をしても二時間で周れるコースである。

 寝坊した時や、手軽に海岸の旅を楽しみたい時はいつも南部を巡っているので、北部を周るよりもその回数は自然と増える。

 同じようにバイクでツーリングを楽しむ者もいて楽しい。

 面白いことはあるもので、時々若い少年や青年に、私は誰かと間違われることもよくあった。

「先輩、先輩! 俺っすよ! いやあ驚いたな。今日は仕事じゃなかったんすか?」

 大抵そう声を掛けられるが、私は彼らにまったく覚えがない。

「人違いじゃないか?」

 私がそう尋ねてやると、まじまじとこちらの顔を覗き込んだ二人乗りの彼らは、間もなく「あっ」という顔になる。

 私は「やれやれ」「またか」なんて思ってしまうのだが、まぁ誤解が解けたあとの空気は、嫌いではない。

「すみません、人違いでした。そちらはドライブっすか?」
「南部を一周。それでいて、一番美味い沖縄そばを食べる」

 短い会話は、信号が青に変わることには終わる。