母と妹から聞いたのか、お喋り好きな佐敷の従姉妹に聞いたのかは覚えていない。

 私はそれを見た瞬間、昨日の白いバンであることが分かってしまった。ただ恐ろしくて、俯いていることしかできなかった。

       ※※※

 その一年後、私の抱えていた『白銀堂』に関する疑問が解ける機会があった。

 知っている者には分かるらしいのだが、白銀堂は〝死者が通れない道〟と呼ばれているとのことだった。

 勿論、喪に服している者も白銀堂の前は通ることができないので、その場合は必ず迂回して裏道から通らなければいけない――とか。

 白銀堂の前を、死者は通過してはならない。

 私が恐怖と遭遇したあの日、ちょうどそこに神様がいらしていて、通り抜けようとした死者の気配や意識を絶ってしまったのではないか。

 私が見たあの美しく巨大な神社も、神聖なる場所のものであろうと、物知りな知人は推測と助言を加えた。


 不思議なこともあるものだなあ。

 今思い出しても、生々しいほどに覚えているあの気配にはゾッとするが、あれから数年経ち、ようやくどうにかきちんと語ることが出来るようになった。

 見えないモノに翻弄されるけれど、見えない神様にも人間って見守られているんだと思う。

 まあ難しいことはこれ以上考えるまいと、私はやはり口をつぐんでしまうのである。