私が悲鳴を上げると同時に、進行し続ける私とバイクは、巨大な白い手の柔らかな感触に包まれ――そして通過していた。

 それは、実に不思議な感覚だった。

 ふんわりと雲に触れたような感触で、心地よい冷たさが身体の芯まで通過し、背中や胸、両手足にあった違和感が一気に残らず拭い去られていった。

(今のは、なんだ?)

 私は、前後の車に挟まれて進行を続けながら、横目で鳥居を振り返った。

 こじんまりとした美しい朱色の鳥居の向こうに、真っ白い広大なアスファルトに建つ荘厳と静まり返る神社があった。

 私、は幼い頃に何度かその社を見たことがあった。

 見ているだけでほっとするような安心感を覚えるその神社を、私は長いことずっと探しながらドライブしていたのである。

       ※※※

 無事に帰宅した翌日、私は那覇市から最短経由を用いてその場所へと向かった。

 ありがとう、そう感謝がしたかったのだ。

 しかし、私は再度その場所を見て愕然とした。色褪せた小さな鳥居の向こうには何もなかったのだ。

 そこは『白銀堂』という看板があり、こじんまりとした場所だった。鳥居の隣にある岩の後ろが御願所になっているばかりで、崖に囲まれている。