バイクは車の通りがない道を急かすように走り続け、遠回りした道を市街地へと向けて突き進む。

 私は自分を落ちつけようと努力ながら、すっかり見えなくなった交差点を頭の中から追い出そうとした。

 それでもまだ、心臓は嫌なふうにどきどきと鳴っている。

 私は勘で道を次々と曲がり、ずんずんとバイクを進めていった。

 いつものドライブコースの終点である市街地に出た頃、ようやくバイクのメーターに視線を降ろすと、時刻は午後の二時を過ぎていた。

 私はどこか安堵しながらも、まだ身体の奥がざわざわと嫌な感じがすることに気付いていた。

(早く家に帰って塩を振りかけてもらうか、立ち寄る店で『島マース』――県内で一般的に販売されており、料理や魔よけに盛ったりする県産の塩――を購入して、つきまとうようなアレの気配を断ちたい)

 そう私は思った。

 だが、糸満市街地の中心を通りかけた時だった。

 私はふっと視界の端に朱色の鳥居を見て、ハッとした。しかし振り返るよりも早く、透明でありながら、薄く白い色を持った巨大なナニモノかの手が前方を覆った。

「うわっ」