数分置きに三台ほどの車とすれ違ったり、私の後ろから同じような車が数台追って来るように続くたび「市街は近いぞ」と思った。

 知らない道のりを探索し続けていると、不思議と場所慣れして、自分の位置が把握できるようになるし――。

(このまま道を真っ直ぐに進めば、そのまま糸満市街に辿り着くな)

 私はそう確信していた。

 バイクに表示されているデジタル時計は午後一時半くらい。ちょうど私が腹のすき具合を感じだした頃だった。

 すっかりそば屋を通り過ぎてしまっており、私は『じゃあ糸満の市場で刺身丼でも買おうかな?』などと考えていた。

 バイクが進んでいく真っすぐの一本道は、ゆるやかに山を下るように続く。

 歩道に植えられた高い木々が、傾いた日差しをいい具合に遮って、快適だった。

 農村や山の間なので、風は冷たく、火照った身体にはもってこいだ。

「ふん、ふん」

 私は何度も深呼吸しつつ、そう満足げに鼻で笑った。

 私の後ろに続く二台の車も、すれ違う車もだいたい長く車間距離を保って走っているので、すべてが快適だ。

 ――ざわ。

 その時だった。

 不意に、鳥肌が立った。

 道を下りながら、私の心臓がなぜかどきどきと不安を奏でだした。