帰ったら、母さんは出掛けててホッとした。
綺麗にしといてくれ、とジャージ禁止令を出したけど、人の言うことあんまり聞かなくて大雑把な性格だから、内心ビビってた。
姿自体が無くて、ありがたい。
家に入れる時も勇気がいったけど、澤井は物珍しそうにキョロキョロはするものの、狭さやごちゃごちゃさに引く様子も無くホッとした。
部屋は一週間かけて片付けた。クローゼットに押し込めたともいうけど、他の友達ならこんな事したことがない。結構大変だったけど澤井の「きれいにしてるじゃん」の一言で一週間の労力が報われた。
「わあ! ナナちゃんだあ!」
俺が部屋に連れてきたナナを見て、澤井は歓喜の声を上げた。
ナナ目当てなのは俺はどうでも良い気がして悲しいけど、久しぶりに元気な様子を見て、喜んでくれてめちゃくちゃ嬉しい。
「可愛い……」
「え?」
「か、可愛いだろ! ナナ!」
ヤッバ! 心の声をお漏らししてた。キャッキャしてる澤井を見てたら無意識に呟いてた。それをナナになすりつけた。いや、ナナもホントに可愛いけど!
「ナナちゃん、羽根艶良いね。流石インコ博士。エサなにあげてんの? 僕も負けない! 帰ったらキキを全力で愛でてやる!」
澤井は俺にライバル心をむき出しにしてきた。ドセレブなんだから、澤井が本気出したら、キキちゃん凄いことになるだろうな。
もう、澤井は何しても可愛いと思ってしまう。でも一つだけやめて欲しい事がある。
最近ちょいちょい俺の事”インコ博士”って呼ぶ。休み時間何人か振り向くし、恥ずかしいし……それより同じ呼ぶんなら、俺の名前を呼んで欲しい一眞って。
(うわっ!! 正気か、俺!? とんでもなく、ハズい!)
ふと思った事の中2さに、床に這いつくばりそうになった。
仕方が無い! 自分の部屋に澤井が居るという、想像外の事実に頭がバグってる。
だって、俺……好きな奴が、初めて家に来たんだ。