「澤井、それは違うって。俺、確かに今まで同性に興味なかった。それに知った時は澤井の片想い相手に驚いたのは確かだけど。そういう事じゃ無くて……
自分でもびっくりしたけど、この気持ちは誰のせいとかじゃなく、自分で、だから、」
「そうなんだ……だけどさ、最近僕、先輩と音信不通でもう話題さえ無い事、お前が一番良く知ってるだろ。だから同情、とかの気持ちなんじゃないの?」
「『同情』? それも全然違うよ! スペックの無駄遣い全振りしてる澤井のこと、今は尊敬してるし! それに、ユウタセンパイの事も可能性が無くなった訳じゃ……
正直こんな可愛い雨宮相手にしないなんて、先輩バカだと思うし、いつか絶対魅力に気付いてくれると思う」
「は?! か、かわいいとか、いいながら、お前この期に及んで先輩応援すんの? この状況で?」
「だって……俺は……澤井とどうかなれるだなんて、そんな恐れ多いことおもってない。家に来てくれることが嬉しくて、ただ気持ち知って欲しかっただけだった。ナナ利用して悪かったけど、それで満足っていうか……
正直計画に必死で、伝えた後のことなんか、俺、なーーんにも考えて無かった……」
今駅前のロータリーで、澤井に言い返した。自分の気持ちを改めて振り返った。喋りながら俺自身の本心を初めて伝えた。澤井に。そして、自分にも。
そう。キキに教える名目で夜な夜な気持ちを吐き出してたけど、その後のこと、本当に何にも考えて無かった。
家に来てくれることが一大イベントに必死で。
伝えること、思いついた計画に必死で。
――その先のことなんて、何も。余裕が無くて、自信も、無い。
俺の気持ちを知った澤井は、やっぱり浮かない顔だ。
友達で居られたらと思ったけど、やっぱりそれも無理なのかな。
明日学校、どうしよう……
「お前の気持ち、僕には解らないよ」
「今正直に一杯話したのに?!」
こんなに頑張った全力の本音、伝わらなかった? 文化の違い?!
「だって……今日、お母様とキキちゃんには告られたけど……肝心の本人から、何にも言われてないんだもん」
驚いて避け続けた澤井の顔を見ると、オレンジと黄色に包まれて、キラッキラにひかりながら、俺を睨んでる。
ほんとだ……結局俺、言ってない。澤井に。
「ちゃんと、言えよ」
言って、いいのか?
口から心臓飛び出そう。
「澤井くん、が、す、きです」
言えた。俺、言えた!
死にそう……バクバクして息苦しい。ぜってー熱出てる。