ナナのお陰で場が和んで救われた。俺は全てを無かったことにして、インコ談義に花を咲かせた。
 近所までケーキを買いに行き、こないだディナーショー観に行く為に着ていった服に着替え、宣言通り母さんはお茶とお菓子を持ってきてくれた。
 俺が好きだということは、当たってるけど、半分誤解はとけてない。付き合ってると思い込んでいる。相手が男がと知っても笑い飛ばしてくれてナナと同じく救われた、けど。
 おせっかいばばあと化した母さんにちゃんと送って行くよう、促された。
 もう今日は勘弁して欲しい。
 人生初告白、失敗しかしてない恥ずかしい計画、失態。精神的衝撃と全身脱力で、正直歩けるか自信がない。
 
「あのさあ、まただんまり?」
 
 遠く感じる最寄り駅まで、足を右左交互に出すことに精一杯の俺に、澤井が話しかけてきた。
 顔をあげると景色は綺麗な夕暮れの筈なのに、俺の目には一面グレーに見える。
 
「勝手に謝って、勝手に落ち込んでる所悪いんだけどさ……僕のせいで、感化されてない?
お前、ミイラ取りがミイラになったんじゃないの?」
「ミイラ?がミイラ?」
 
 回らない脳になぞなぞみたいなこと言われた。

「僕が男……悠太先輩が好きだって話、延々聞かされたから、変な影響受けちゃったんじゃないの? だって最初は僕を慰めて、諦めさせようとしてくれてたじゃん。
いっつもクラスの女子に喋りかけられたらヘラヘラしてたし、雨宮はこっち側じゃないだろ? 僕に感化されたちゃったんじゃないのか」
「え、」
「ミイラになったって、そー言う状態をいうの。海外育ちに、日本語教わんなよ」

 澤井に頭を叩かれた。痛みは感じ無かったけど、少し我に返った。澤井はやっぱり賢いな。覚えておこう。いや、そんな事なんかより――