スタジオ予約時間終了三十分前に撮影は終わった。金井の着替え時間を考慮しての事だった。
小沢は、一眼レフの液晶画面を見て写真をチェックしながら「いい写真が取れた」と満足げに笑っていた。
「あ、そうそう。動画はさっき準備中に消したし、あと、例の痴漢、捕まったらしいぞ。結構色々とやらかしていたらしい。これで安心してコスプレイベント行けるな」
金井は突き放すような言葉を聞いて、絶望に打ちひしがれた。もう楽しい時間は終わったのだ。一緒に買い物に行ったり、通話をしたりする時間はもうやってこない。
薄々わかっていたことだが、改めて現実を認識すると胸が痛い。目の前がぼやける。これは、涙だ。
「金井。この写真よくとれて……って、どうした?」
小沢が金井の顔を見て、驚いたような顔をした。
「め、めに、ゴミが……」
嗚咽をもらして、泣いている。全くもって酷い嘘だ。目にゴミが入ったくらいでそうはならない。
「嘘をつくなよ。目にゴミが入ったくらいでそうはならない」
小沢は、人差し指で金井の涙をすくった。
涙が止まらない。次はどうやって言い訳しよう。何も思い浮かばない。
「悩みならなんでも聞くぞ?」
小沢が金井を抱きしめ、背中をとんとんと抱きしめた。どうせ一緒にいる時間なんてなくなるのに、どうしてそんなに優しい言葉をかけてくるのか。
「なんでも……?」
「うん」
「……俺、もうぼっちは嫌だ。そう思ったのは小沢くんの、せいだ」
そう言いきると、スタジオは沈黙によって支配された。小沢もきっと困っていることだろう。
自分が発言した言葉で困っていると、突然ぎゅっと力強く抱きしめられた。
「俺は、金井がぼっちでも楽しんでいる所を見るのが好きだった」
小沢は金井の耳元で囁いた。思いがけない告白だった。
「え……?」
「俺は寂しさを紛らすために群れていないとダメみたいで」
小沢は寂しがりやであったことを知り、金井は意外に思った。
「うん……」
「最初はその強さの秘密が知りたかった。だけど、そんなのどうでもいい。二人で沢山遊んで楽しかった。キスしてみて確信したよ」
「……!」
この続きの言葉を期待してもいいのだろうか?
「これは友達に持つ感情じゃない。その先を考えてくれない?」
こんなご都合展開があってたまるか! それが小沢の告白を聞いた時に脳裏に浮かんだ金井の感想だった。
「ば、罰ゲームじゃない? ゲームに負けてないよね? 陽キャがよくやるアレ!」
よく漫画なんかであるじゃないか。ゲームに負けたら陰キャに告白して弄ぶ遊びが。ご都合展開に頭がパニックになってしまい、ついそんな言葉が出てしまった。
「ふっ、はははっ! 罰ゲームで夏休み丸々お釈迦にする奴がいるかよ。なんなら、もう一回キスする? 次は舌絡める奴で」
舌を絡めるって! エッチな漫画で見かけるアレをするというのか!? そんなことされたらきっと気絶してしまう!
「信じる! 信じるから! こ、恋人になるし!」
「じゃ、学校でもイチャイチャしようね?」
「みんな、からかったりしない?」
「あー、あいつらな、別にそんなことはしないよ。もしかして、陽キャに警戒心持ってる?」
「うん、幼稚園の時、そういう奴らにいじめられてからどうしても」
金井はいじめの経験からコスプレを始めたきっかけを話した。
「大丈夫だから、良い陽キャがいること証明してやるから、新学期始まったら俺たちの所来いよ」
小沢はは金井の頭をぽんぽんと撫でた。ウィッグ越しに撫でられたため、ウィッグを装着していることが、こんなに嫌だと思った事は初めてだった。
「が、頑張る!」
スタジオの時間が残り僅かとなり、滅茶苦茶頑張ってメイク落とし、着替えを済ませた。
小沢は、一眼レフの液晶画面を見て写真をチェックしながら「いい写真が取れた」と満足げに笑っていた。
「あ、そうそう。動画はさっき準備中に消したし、あと、例の痴漢、捕まったらしいぞ。結構色々とやらかしていたらしい。これで安心してコスプレイベント行けるな」
金井は突き放すような言葉を聞いて、絶望に打ちひしがれた。もう楽しい時間は終わったのだ。一緒に買い物に行ったり、通話をしたりする時間はもうやってこない。
薄々わかっていたことだが、改めて現実を認識すると胸が痛い。目の前がぼやける。これは、涙だ。
「金井。この写真よくとれて……って、どうした?」
小沢が金井の顔を見て、驚いたような顔をした。
「め、めに、ゴミが……」
嗚咽をもらして、泣いている。全くもって酷い嘘だ。目にゴミが入ったくらいでそうはならない。
「嘘をつくなよ。目にゴミが入ったくらいでそうはならない」
小沢は、人差し指で金井の涙をすくった。
涙が止まらない。次はどうやって言い訳しよう。何も思い浮かばない。
「悩みならなんでも聞くぞ?」
小沢が金井を抱きしめ、背中をとんとんと抱きしめた。どうせ一緒にいる時間なんてなくなるのに、どうしてそんなに優しい言葉をかけてくるのか。
「なんでも……?」
「うん」
「……俺、もうぼっちは嫌だ。そう思ったのは小沢くんの、せいだ」
そう言いきると、スタジオは沈黙によって支配された。小沢もきっと困っていることだろう。
自分が発言した言葉で困っていると、突然ぎゅっと力強く抱きしめられた。
「俺は、金井がぼっちでも楽しんでいる所を見るのが好きだった」
小沢は金井の耳元で囁いた。思いがけない告白だった。
「え……?」
「俺は寂しさを紛らすために群れていないとダメみたいで」
小沢は寂しがりやであったことを知り、金井は意外に思った。
「うん……」
「最初はその強さの秘密が知りたかった。だけど、そんなのどうでもいい。二人で沢山遊んで楽しかった。キスしてみて確信したよ」
「……!」
この続きの言葉を期待してもいいのだろうか?
「これは友達に持つ感情じゃない。その先を考えてくれない?」
こんなご都合展開があってたまるか! それが小沢の告白を聞いた時に脳裏に浮かんだ金井の感想だった。
「ば、罰ゲームじゃない? ゲームに負けてないよね? 陽キャがよくやるアレ!」
よく漫画なんかであるじゃないか。ゲームに負けたら陰キャに告白して弄ぶ遊びが。ご都合展開に頭がパニックになってしまい、ついそんな言葉が出てしまった。
「ふっ、はははっ! 罰ゲームで夏休み丸々お釈迦にする奴がいるかよ。なんなら、もう一回キスする? 次は舌絡める奴で」
舌を絡めるって! エッチな漫画で見かけるアレをするというのか!? そんなことされたらきっと気絶してしまう!
「信じる! 信じるから! こ、恋人になるし!」
「じゃ、学校でもイチャイチャしようね?」
「みんな、からかったりしない?」
「あー、あいつらな、別にそんなことはしないよ。もしかして、陽キャに警戒心持ってる?」
「うん、幼稚園の時、そういう奴らにいじめられてからどうしても」
金井はいじめの経験からコスプレを始めたきっかけを話した。
「大丈夫だから、良い陽キャがいること証明してやるから、新学期始まったら俺たちの所来いよ」
小沢はは金井の頭をぽんぽんと撫でた。ウィッグ越しに撫でられたため、ウィッグを装着していることが、こんなに嫌だと思った事は初めてだった。
「が、頑張る!」
スタジオの時間が残り僅かとなり、滅茶苦茶頑張ってメイク落とし、着替えを済ませた。