四時間めが終わり、私が最も恐れていた時間がやってきた。
お昼休み。
日那ちゃんがいつものようにお弁当を持って私の元へとやって来る。
その後ろを追い掛けるようにして、染夜さんたちも当たり前が如くついた来た。
私の席の周りにある机や椅子をくっつけて一つの円になる。
皆がそれぞれ、お昼御飯を机に広げた。
「そういえばさー、もう少ししたら期末テストあるじゃん?皆で勉強会しない?」
「陽百、それすっごくいいじゃん!どうせなら男子とかも呼ぼうよー!」
相変わらず、雨宮さんと雲田さんがテンポ良く話す。
会話に入れる気がしない。
「千昼ー。どうせなら、北川くんも誘おうよー!」
「いいじゃん、誘おうー!」
二人の声に染夜さんは照れるように頷いた。
どうしてここで、夕侑が出てくるの?
一人だけ置いてけぼりな私を見かねたかのように日那ちゃんがこそっと言う。
「千昼、北川くんの事好きなんだって。」
日那ちゃんは何とも言えない表情を浮かべた。
私に気を遣ってくれているのだろう。
ていうか、ここにいる全員その事について知っていた。
私だけ知らなかった。
何だかもやもやする。悲しくなる。
何で私ばかり、こんな思いをするのだろう。
「あっ、西原さんて北川くんと同じ中学じゃなかった?」
「うん、そうだけど。」
「北川君の事誘ってくれない?」
こういう時だけ、染夜さんが話しかけてくる。
(自分で誘ってよ…。)
そう思うも内心、頼られたことは嬉しいようで
「…うん、いいよ!」
と勝手に口が動いていた。
空気のような存在の私が初めて必要としてもらえた。
悔しいけど、それが真実のようだった。
「ありがとうー!」
染夜さんが初めて私に笑顔を向けた。
「ねぇ、あとはー?」
「東君じゃない?頭良いし。」
「西原さん、東君とも朝、親しげだったよね?」
「そうじゃん!西原さん、東君の事も誘ってくれない?」
二人のテンポの良い会話に、ついていくのに必死で反応が遅れてしまった。
「いや、さすがにそれは。玲ちゃんばっかり負担大きいし、私も手伝うよ!」
夕侑の事を知っている日那ちゃんがそう声をかけてくれた。
「日那、優しいー!じゃあ、二人ともよろしくねー!」
そんな感じでその日のお昼休みは終わった。
「玲ちゃん、大丈夫?北川君のこと、私が代わりに誘ってみようか?」
「いや、染夜さん達に「うん!」って言っちゃったのは私だから頑張ってみる!」
「そっか!何かあったら言ってね!」
どこまでも優しい日那ちゃん。
でも、その優しさに甘えてばかりいたら、今のままだと思った。
これはチャンスかもしれない。
私が本当に変わるための。
『近づくな。』
『目障り何だよ。』
『お前なんて嫌いだ。』
嫌な過去を思い出す。
駄目だ。このままじゃ。
もっと、楽しかったときの事を思い出せ。
夕侑と過ごしたこの13年間。
楽しかったことも嬉しかったこともたくさんある。
それでも、最後に出てくるのはあの冷たい目をした夕侑だった。
正直、夕侑と話すのが怖い。
でも、せっかく必要としてもらえたのに裏切るなんて出来ない。
ずっとぐるぐる授業中も考えていた。
授業の終わりを知らせる予鈴がなる。
いつもなら、解放感でいっぱいになるはすが、今日は終わってしまった。という感覚が強い。
放課後になり、皆、部活へ行ったり帰宅したりするために教室を出ていく。
私は帰りの支度をしている夕侑の元へ意を決して近づいた。
「…夕…北川君。あのさ、今度染夜さん達と勉強会するんだけどよかったら一緒にどう?」
声が震えた。
何か月ぶりに話しただろう。
そう思ってしまうくらい、お互い拒絶していたことがわかる。
「はぁ。何でだよ」
冷たくそう言葉を吐く。
鋭くこちらを睨む目は、あきらかに怒りを含んでいた。
その目から逃れるように視線をそらす。
「ねぇー!何の話してるのー?」
その後に続くであろう、夕侑の否定の言葉よりも先に、近くにいた龍くんが話しかけてきた。
「今度、期末テストのために勉強会するんだけど、龍君も一緒にどうかな?」
自信なさげに言うと龍君は
「いいねー!玲ちゃんも参加するなら俺も参加する!」
とワクワクした表情で笑った。
夕侑の方にまた、視線を戻すとさっきよりも不機嫌そうに顔をしかめている。
「北川君は無理そうなら…」
「あぁ"。無理なんて一言も言ってねーだろうが。勝手に決めんな!俺も参加する!」
そう、イライラしながら去っていった。
*
「北川君と東君、両方参加できるって。あと、二人と仲が良い海藤くんも一緒に参加したいらしい。」
「えー!本当に!ありがとう、西原さん!」
染夜さん達は笑顔で「やったー!」と笑い合っていた。
そんな三人から離れると日那ちゃんが付いてくる。
「玲ちゃん!良く頑張ったね!」
そう言って褒めてくれる日那ちゃん。
やっぱり日那ちゃん、大好きだ。
ずっと友達でいたい。
「じゃーね!」
と言い合い長い一日は幕を閉じた。
お昼休み。
日那ちゃんがいつものようにお弁当を持って私の元へとやって来る。
その後ろを追い掛けるようにして、染夜さんたちも当たり前が如くついた来た。
私の席の周りにある机や椅子をくっつけて一つの円になる。
皆がそれぞれ、お昼御飯を机に広げた。
「そういえばさー、もう少ししたら期末テストあるじゃん?皆で勉強会しない?」
「陽百、それすっごくいいじゃん!どうせなら男子とかも呼ぼうよー!」
相変わらず、雨宮さんと雲田さんがテンポ良く話す。
会話に入れる気がしない。
「千昼ー。どうせなら、北川くんも誘おうよー!」
「いいじゃん、誘おうー!」
二人の声に染夜さんは照れるように頷いた。
どうしてここで、夕侑が出てくるの?
一人だけ置いてけぼりな私を見かねたかのように日那ちゃんがこそっと言う。
「千昼、北川くんの事好きなんだって。」
日那ちゃんは何とも言えない表情を浮かべた。
私に気を遣ってくれているのだろう。
ていうか、ここにいる全員その事について知っていた。
私だけ知らなかった。
何だかもやもやする。悲しくなる。
何で私ばかり、こんな思いをするのだろう。
「あっ、西原さんて北川くんと同じ中学じゃなかった?」
「うん、そうだけど。」
「北川君の事誘ってくれない?」
こういう時だけ、染夜さんが話しかけてくる。
(自分で誘ってよ…。)
そう思うも内心、頼られたことは嬉しいようで
「…うん、いいよ!」
と勝手に口が動いていた。
空気のような存在の私が初めて必要としてもらえた。
悔しいけど、それが真実のようだった。
「ありがとうー!」
染夜さんが初めて私に笑顔を向けた。
「ねぇ、あとはー?」
「東君じゃない?頭良いし。」
「西原さん、東君とも朝、親しげだったよね?」
「そうじゃん!西原さん、東君の事も誘ってくれない?」
二人のテンポの良い会話に、ついていくのに必死で反応が遅れてしまった。
「いや、さすがにそれは。玲ちゃんばっかり負担大きいし、私も手伝うよ!」
夕侑の事を知っている日那ちゃんがそう声をかけてくれた。
「日那、優しいー!じゃあ、二人ともよろしくねー!」
そんな感じでその日のお昼休みは終わった。
「玲ちゃん、大丈夫?北川君のこと、私が代わりに誘ってみようか?」
「いや、染夜さん達に「うん!」って言っちゃったのは私だから頑張ってみる!」
「そっか!何かあったら言ってね!」
どこまでも優しい日那ちゃん。
でも、その優しさに甘えてばかりいたら、今のままだと思った。
これはチャンスかもしれない。
私が本当に変わるための。
『近づくな。』
『目障り何だよ。』
『お前なんて嫌いだ。』
嫌な過去を思い出す。
駄目だ。このままじゃ。
もっと、楽しかったときの事を思い出せ。
夕侑と過ごしたこの13年間。
楽しかったことも嬉しかったこともたくさんある。
それでも、最後に出てくるのはあの冷たい目をした夕侑だった。
正直、夕侑と話すのが怖い。
でも、せっかく必要としてもらえたのに裏切るなんて出来ない。
ずっとぐるぐる授業中も考えていた。
授業の終わりを知らせる予鈴がなる。
いつもなら、解放感でいっぱいになるはすが、今日は終わってしまった。という感覚が強い。
放課後になり、皆、部活へ行ったり帰宅したりするために教室を出ていく。
私は帰りの支度をしている夕侑の元へ意を決して近づいた。
「…夕…北川君。あのさ、今度染夜さん達と勉強会するんだけどよかったら一緒にどう?」
声が震えた。
何か月ぶりに話しただろう。
そう思ってしまうくらい、お互い拒絶していたことがわかる。
「はぁ。何でだよ」
冷たくそう言葉を吐く。
鋭くこちらを睨む目は、あきらかに怒りを含んでいた。
その目から逃れるように視線をそらす。
「ねぇー!何の話してるのー?」
その後に続くであろう、夕侑の否定の言葉よりも先に、近くにいた龍くんが話しかけてきた。
「今度、期末テストのために勉強会するんだけど、龍君も一緒にどうかな?」
自信なさげに言うと龍君は
「いいねー!玲ちゃんも参加するなら俺も参加する!」
とワクワクした表情で笑った。
夕侑の方にまた、視線を戻すとさっきよりも不機嫌そうに顔をしかめている。
「北川君は無理そうなら…」
「あぁ"。無理なんて一言も言ってねーだろうが。勝手に決めんな!俺も参加する!」
そう、イライラしながら去っていった。
*
「北川君と東君、両方参加できるって。あと、二人と仲が良い海藤くんも一緒に参加したいらしい。」
「えー!本当に!ありがとう、西原さん!」
染夜さん達は笑顔で「やったー!」と笑い合っていた。
そんな三人から離れると日那ちゃんが付いてくる。
「玲ちゃん!良く頑張ったね!」
そう言って褒めてくれる日那ちゃん。
やっぱり日那ちゃん、大好きだ。
ずっと友達でいたい。
「じゃーね!」
と言い合い長い一日は幕を閉じた。