しばらくして、私は実稲の異変に気づいた。

身体が、薄くなっている。

どうしよう。

そう思っても、何もできない。

ひたすらに実稲の手を握るふりをするだけ。

お願い、神様。

実稲を助けて。

お願い!

その願いが通じたのか、目の前が白一色に染まると、何かが降りてーー

こなかった。

「え?」

この1音に私の全てが籠もっていた。

だって神様を呼んで、不自然に目の前が光ったら…。

来るよね?

普通は。

そもそもこの状況って普通じゃない?

って、そんな事考えてる場合じゃない。

そうこうしている間に、実稲の身体は薄くなり続けている。

不意に、実稲の胸のあたりがぼんやりと光った。

さっきみたいな眩しい光じゃなくて、優しい光。

その光は私の方へ近寄ってきて、言った。

「ありがとう」、と。

確かに、そう言った。

光は実稲の胸の中に戻って。

実稲は、この世界から消えた。