幻の記憶ー忘れ去られた陰陽師ー

私が霊になっていることに気がついたのは魂が身体から離れてすぐ。

その後は、ずっと実稲の後をつけていた。

ふらふらと起き上がり、無意識にプールへ向かって水を溜めたら…。

泣きそうになった。

というか泣いていた。

でも、いくら触れようとしても私の手は実稲の身体をすり抜けた。

実稲のご両親がプールから引き上げてくれたときは本当に安心した。

その時も泣いていた。

私、泣き虫になっちゃったのかな。

実稲も泣いていた。

死にたいって。

水の中で実稲は、笑ってた。

やっと死ねる、って。

これで、水波やお父さんお母さんに償えるって。

私はーーきっと実稲のご両親も、そんなもの望んでいないのに。

生気のない顔で起き上がったと思ったら、今度は寮へと移動した。

私はその様子をハラハラしながら見守っていた。

ぐっしょりと濡れた制服のまま、ベッドに倒れ込んだ。

着替えさせてあげたい。

あったかいお風呂に入れてあげたい。

美味しいスープを作ってあげたい。

もう、それはできないんだな。

誰が悪いのでもない。

私も、実稲も、パパもママも、誰も悪くない。

これは体質で、運命で、理だから。

それでも、無性に悲しくなった。

また泣いていた。

せめてもと、そっと実稲の隣に横になった。

でも、ベッドは私をすり抜ける。

諦めて近くに浮く。

「おやすみ。」

そう呟く。

子守唄を歌いながら、実稲の頭を撫でるふりをする。

実稲の顔から、緊張が消えていく。

少しほっとして、そのまま歌い続ける。

この歌は、実稲が小さい頃から大好きな曲。

安らかに、眠れますよう。

そんな願いを込めて、歌い続けた。