「どうしよう…。」

私、天川(あまかわ)水波(みずは)は困っていた。

とても、困っていた。

親友である亜輝(あかぐ)実稲(みいね)を助けるため、自分の全霊力を犠牲に彼女の記憶を削除したものの、彼女より霊力の低い私は彼女の抵抗に負けてしまったのだ。

彼女の抵抗ーーすなわち彼女の望みは、2つあった。

1つは私が消えないこと。

その望みは、私が幽霊以上地縛霊以下という半端な存在になることで叶えられた。

次に、自分が消えること。

それは、彼女が別次元の世界ーー並行世界(パラレルワールド)へ行くことで叶えられた。

叶えられてしまった。

今の私には、できないことが多い。

移動はできる。

陽道の霊符もかけるし、使える。

陰道の魔術も使える。

ただ、霊以外の誰にも見えないし、魔術を使って世界に干渉もできない。

といった具合に。

幽霊であれば、49日を現し世で過ごした後に黄泉の国へと成仏する。

生前の人物の存在は現し世に残っていて、霊符や魔術は使えない。

一方地縛霊は、己の意思による成仏の権利、生前の現し世での存在、移動の自由と引き換えに、現し世へ関与する霊術を手に入れた霊。

私は、移動できるし力も使えるけど現し世への関与はできず、存在も消えている。

おまけにどの霊からも見えていないときた。

さぁ、どうしよう。

というのが冒頭の内訳である。