---怒涛の世話係から八日。週が一回りした。

「ふーちゃん!」
「何ですか?」

 呼ばれすぎて、違和感なく答えている自分が少し怖い。

「あぁ今日も別嬪さん」
「もー何を言ってるんですか!」

 隼人に別嬪と褒められるのにも慣れてしまった自分が本当に怖いが……歩が一応怒って、クラスがざわつく、までが一連の流れ。これも恒例になってしまっているのも怖すぎる。

「昨日で、一週間経ったな」
「はい」
「今日から、同じ一週間の繰り返し?」
「そうです」

 隼人は目を伏せ何故か寂しそうな顔をした。
 翳のある表情を見るのは、初めてだ。大人っぽい男の表情を垣間見て、歩はまた心臓が騒がしくなった。

 慣れない。日に日にひどくなっている。
 こんな時……薬の様に、毎日貰った飴を食べる。
 光にかざすと、宝石の様に光るそれは、味はただ甘いけど、何故か美味しい。癒され落ち着く。
 だけど、隼人が好きな物を特別にくれたと思うと、また胸が痛い。

「なあ、もしかして。もう、終わり?」

 物憂げな表情のまま問われ、歩は戸惑った。
「……何が、ですか?」
「世話係、終わり?」
「そうなりますね」

 歩は暫く考えて、感情無く答えた。そういえば、そうだ。もうお役御免な時期だろう。

「そうか……」
 
斜め前の背中は、歩の思い過ごしか元気がなくなった様に見えた。

  *  *  *