白い、天井?
ここは……。
「あ、気が付きましたか? ご自分の名前、言えますか?」
「……空知、優惺です」
「うん、大丈夫ですね。それでは、点滴を外したら帰って大丈夫ですよ」
この服装に発言内容からして、看護師さんかな?
じゃあ僕は、病院に搬送されて治療を受けた後ってことか。
ベッドから身体を起こすと、結姫の入院してた病院と同じ構造だった。
つまり、結姫やカササギ絡みで何かと縁がある病院に運ばれたってことか……。
「あの……。僕は、助かったんですか?」
「はい。先生も太鼓判を押してましたよ。栄養失調と脱水しかないので、点滴で充分。意識が戻ったら、そのまま帰って平気ですって。良かったですね」
「そう、ですか」
「本当は、まだ未成年なんで保護者さんと帰っていただきたいのですが……。お母様は、合わせる顔がないと……。少し顔を見たら、支払いや手続きをされて逃げるように帰られてしまいまして」
母さんが、僕の元へ来たのか?
まぁ、それはそうか……。
学校には、保護者の緊急連絡先として母さんの携帯電話番号を届け出てるはずだ。
「治療業務に関連しないので、お母様との仲は聞けませんが……」
「他にも、何かありましたか?」
「いえ、面会希望の女の子がいらしてるみたいで……。入院は不要なので面会はできないって伝えたら、ずっと外で待ってるらしいんですよ。もし彼女さんなら、無事を知らせてあげた方がいいんじゃないかなって」
「ぇ……」
僕に会いに来てくれる女の子?
そんなの、一人しか心当たりがない!
「ちょっ! 空知さん、急に走っちゃダメですよ!?」
「お世話になりました!」
周囲の人に気を付け、一階へ駆け降りる。
待合室を抜け玄関を潜ると――
「――結姫……」
「惺くん! 無事で良かった!」
僕の姿を見つけるなり、結姫が駆け寄ってきた。
こんなに近くで結姫と話すのは、どれぐらいぶりだろう?
あの体育館裏以来、か。七夕が終わるまではと避け続けた僕なんかのために……。
「心配かけちゃって、ごめんね」
「ううん! 私こそ、惺くんを守るって前から約束してたのに、栄養失調にも気が付かなくてごめんね!?」
「僕は元々、骨と皮だけみたいな身体だから。気が付かないでしょ」
「それでもだよ!」
骨と皮だけみたいなのは否定してくれないのか。
ああ、こんな結姫とのやり取りも、酷く懐かしく感じる。
結姫のためにならないと決断して、避けてたから。それも僕の身勝手だってカササギに指摘されたからには、もう避ける理由もない。
こんな嬉しい気分、久し振りだ……。
「惺くんのお母さんと会ったよ。……お金を沢山押しつけられてね、『私の代わりに、ご飯を食べさせてやってくれませんか』って……。ぺこぺこ頭を下げて、泣いてた」
「そう、なんだ……」
母さんは母さんで、僕に何か負い目を感じてるのかもしれない。
落ち着いたら連絡しないとな。
「母さんの願いを無理して聞かなくていいよ。今日からは自分でちゃんと食べるから」
「ぶっぶ~! 今の惺くんの言葉は、信用できません! 私が作ります!」
「えぇ……。でも迷惑をかけるし、料理は……」
「一緒に作ろうよ! 惺くん、私が未練を残さないように付き合ってくれるって約束したよね? 何週間も一人になる時間あげたんだから、いい加減に付き合ってよ!」
それを言われちゃうと、弱いなぁ。
距離を置いてた罪悪感が、胸をチクチクと抉る……。
カササギのヒント――天の川のように輝く瓶のような関係に、助け合いとかも関係あるのかもしれない。
もしかしたら、丁度良い機会なのかな。
頷くと、結姫はパッと光が灯った電球のように輝く笑みを浮かべた。
「惺くん、家まで歩けそう? 贅沢にタクシー呼ぶ?」
「いや、歩けるよ。あ、でも結姫が辛いなら……」
「ううん。惺くんが平気なら、私は歩きたいかな。ご飯の材料買いたいし、惺くんとも話したいから。……あ、私の言葉、重かったかな? いや~反省! もっと明るくいくね!」
「……そんな無理、もうしなくていいよ? ネガティブな発言をして、いいんだよ」
僕の言葉が気になったのか、結姫はキョトンとしながら首を捻ってる。
ヒントにあったけど……。真の希望や望み、対話をするためにも、変な気遣いはさせるべきじゃないだろう。
とりあえず、家に向かって歩きながら話をしたい。
思わず浮かんだ笑みを抑えるのが大変だ。
結姫の荷物を奪うように持ち、僕たちは歩きだす。
結姫はスキップしながら、ご機嫌そうにスマホをいじってる。
普通に危ないんだけど……。まぁ、僕が結姫の分も周りに注意をしていればいっか。
「結姫、誰かにメッセージ?」
「うん。この間、『報告と連絡と相談が大事 』って先生が言ってたからね。特に、心配して連絡を待ってくれてる人たちには、ササッと報告をしないとね」
「随分、嬉しそうだね」
「あ、分かる? そっか、分かっちゃうかぁ~!」
中々、目にしないレベルで浮かれてる。
そんなにも、いいことがあったのかな――。
ここは……。
「あ、気が付きましたか? ご自分の名前、言えますか?」
「……空知、優惺です」
「うん、大丈夫ですね。それでは、点滴を外したら帰って大丈夫ですよ」
この服装に発言内容からして、看護師さんかな?
じゃあ僕は、病院に搬送されて治療を受けた後ってことか。
ベッドから身体を起こすと、結姫の入院してた病院と同じ構造だった。
つまり、結姫やカササギ絡みで何かと縁がある病院に運ばれたってことか……。
「あの……。僕は、助かったんですか?」
「はい。先生も太鼓判を押してましたよ。栄養失調と脱水しかないので、点滴で充分。意識が戻ったら、そのまま帰って平気ですって。良かったですね」
「そう、ですか」
「本当は、まだ未成年なんで保護者さんと帰っていただきたいのですが……。お母様は、合わせる顔がないと……。少し顔を見たら、支払いや手続きをされて逃げるように帰られてしまいまして」
母さんが、僕の元へ来たのか?
まぁ、それはそうか……。
学校には、保護者の緊急連絡先として母さんの携帯電話番号を届け出てるはずだ。
「治療業務に関連しないので、お母様との仲は聞けませんが……」
「他にも、何かありましたか?」
「いえ、面会希望の女の子がいらしてるみたいで……。入院は不要なので面会はできないって伝えたら、ずっと外で待ってるらしいんですよ。もし彼女さんなら、無事を知らせてあげた方がいいんじゃないかなって」
「ぇ……」
僕に会いに来てくれる女の子?
そんなの、一人しか心当たりがない!
「ちょっ! 空知さん、急に走っちゃダメですよ!?」
「お世話になりました!」
周囲の人に気を付け、一階へ駆け降りる。
待合室を抜け玄関を潜ると――
「――結姫……」
「惺くん! 無事で良かった!」
僕の姿を見つけるなり、結姫が駆け寄ってきた。
こんなに近くで結姫と話すのは、どれぐらいぶりだろう?
あの体育館裏以来、か。七夕が終わるまではと避け続けた僕なんかのために……。
「心配かけちゃって、ごめんね」
「ううん! 私こそ、惺くんを守るって前から約束してたのに、栄養失調にも気が付かなくてごめんね!?」
「僕は元々、骨と皮だけみたいな身体だから。気が付かないでしょ」
「それでもだよ!」
骨と皮だけみたいなのは否定してくれないのか。
ああ、こんな結姫とのやり取りも、酷く懐かしく感じる。
結姫のためにならないと決断して、避けてたから。それも僕の身勝手だってカササギに指摘されたからには、もう避ける理由もない。
こんな嬉しい気分、久し振りだ……。
「惺くんのお母さんと会ったよ。……お金を沢山押しつけられてね、『私の代わりに、ご飯を食べさせてやってくれませんか』って……。ぺこぺこ頭を下げて、泣いてた」
「そう、なんだ……」
母さんは母さんで、僕に何か負い目を感じてるのかもしれない。
落ち着いたら連絡しないとな。
「母さんの願いを無理して聞かなくていいよ。今日からは自分でちゃんと食べるから」
「ぶっぶ~! 今の惺くんの言葉は、信用できません! 私が作ります!」
「えぇ……。でも迷惑をかけるし、料理は……」
「一緒に作ろうよ! 惺くん、私が未練を残さないように付き合ってくれるって約束したよね? 何週間も一人になる時間あげたんだから、いい加減に付き合ってよ!」
それを言われちゃうと、弱いなぁ。
距離を置いてた罪悪感が、胸をチクチクと抉る……。
カササギのヒント――天の川のように輝く瓶のような関係に、助け合いとかも関係あるのかもしれない。
もしかしたら、丁度良い機会なのかな。
頷くと、結姫はパッと光が灯った電球のように輝く笑みを浮かべた。
「惺くん、家まで歩けそう? 贅沢にタクシー呼ぶ?」
「いや、歩けるよ。あ、でも結姫が辛いなら……」
「ううん。惺くんが平気なら、私は歩きたいかな。ご飯の材料買いたいし、惺くんとも話したいから。……あ、私の言葉、重かったかな? いや~反省! もっと明るくいくね!」
「……そんな無理、もうしなくていいよ? ネガティブな発言をして、いいんだよ」
僕の言葉が気になったのか、結姫はキョトンとしながら首を捻ってる。
ヒントにあったけど……。真の希望や望み、対話をするためにも、変な気遣いはさせるべきじゃないだろう。
とりあえず、家に向かって歩きながら話をしたい。
思わず浮かんだ笑みを抑えるのが大変だ。
結姫の荷物を奪うように持ち、僕たちは歩きだす。
結姫はスキップしながら、ご機嫌そうにスマホをいじってる。
普通に危ないんだけど……。まぁ、僕が結姫の分も周りに注意をしていればいっか。
「結姫、誰かにメッセージ?」
「うん。この間、『報告と連絡と相談が大事 』って先生が言ってたからね。特に、心配して連絡を待ってくれてる人たちには、ササッと報告をしないとね」
「随分、嬉しそうだね」
「あ、分かる? そっか、分かっちゃうかぁ~!」
中々、目にしないレベルで浮かれてる。
そんなにも、いいことがあったのかな――。