四月。

 狭山高校入学式の日がやってきた。

 変な感情や違和感を与えてしまう僕より、今は新入生同士の(きずな)を深めるべきだと結姫には事前に伝えてある。

 今日は凛奈ちゃんと一緒に登校してくるのかな?

 周りが浮き足立つ新年度だというのに、僕はいつもとそう変化はない。

 一人で登校しながら、心なしか少し胸をときめかせてるぐらいの心境の変化だけ。

 「……楽しみだな。結姫が待ち望んだ、制服で高校に通う姿」

 咲き誇っていた桜も散り始めた。

 少し肌寒い風に、(さわ)やかな桜の香りが混じってる。

 頬に触れて離れない花びらが違和感だ。

 手で()がし、風に乗せて手放す。

 良い感じの桜吹雪(ふぶき)桜絨(じゅう)(たん)が新入生を迎えてくれるはずだ。

 入学式で結姫は、どんな表情を浮かべるんだろう? 笑ってくれるかな?

 その瞬間を楽しみに、僕は学校支給のタブレットに表示された新教室へ向かう。

 この後は短いHRの後に始業式、そして二年生として新入生を迎える入学式だ。

 ソワソワしながら始まった始業式の最中も、ずっと不安だった。

 結姫のコミュニケーション能力、今の身体なら気を遣われることもないと信じてる。

 だけど――もしも、結姫は病弱で気を遣うって先入観がある子がいたら?

 地元の高校だから、小学校や中学校の同級生もいる。

 一回もしを考え始めたら、もう止まらない……。

 早く、早く入学式が始まれ。元気で喜ぶ姿を見たいんだ――。