まだか、まだかという結姫の心が伝わってくるように、手が小刻みに震えてる。

 そんな結姫の肩を(たた)

 「結姫、目を開けてみな」

 「……ぇ」

 「よく頑張ったね。展望フロアだよ」

 目をまん丸に開いた結姫は、「ぁ……」と小さく声を漏らした。

 そうしてエレベーターから、小さく開けた世界へ一歩を踏み出し――

 「――高い、凄い! 地上のイルミネーションも星も人も、海まで全部見渡せるよ~! うわぁ……。これは確かに、宝石だ!」
 
 嬉しいよね。僕も嬉しいよ……。

 感動して涙ぐみながら、ガラス窓に張りつく結姫の元気な姿が愛おしい。

 「こんな高い場所にエレベーターで上がるなんて、今までの私じゃできなかった……。惺くん、私は幸せ者だ。色んな綺麗なもの、もっと一緒に見て周りたいな」

 感極まったような声が、心を震わせてくるな……。

 結姫が幸せと感じてくれる。こんなに嬉しいことが、他にあるだろうか?

 「来年も、それからも。結姫へ綺麗な景色を見せるよ。そうなるように僕が守るから」

 「……惺くん? 私、もう守られてばっかの弱い子じゃないよ?」

 「そっか、結姫は乗り越えてるもんね。僕は本当に、満足だよ」

 カササギに余命契約の更新を、絶対にしてもらうんだ。

 その決意を胸に、一緒にの部分は濁した。

 入口でも言われたけど……。結姫の隣には、もっと相応しい人がいるだろう。

 来年を手に入れたら、もっと釣り合う人がクリスマスイブには隣に立ってるかもしれない。

 それに、だ。

 僕は、この愛おしい光景を永遠で確実なものにしたいから――。