十二月に入り、寒い気温とは裏腹に、いよいよ受験に向けて熱も高まってきた。

 突っ走り続けてきたから、結姫も息切れ気味だ。

 何とかしないと、とか思っていると

 『受験勉強、飽きた。そろそろ遊びたい。また病気が再発した時に、後悔しないように遊びも必要だと思うの。せめてクリスマスイブくらい、一緒にどっか行きたい』

 そう、メッセージが送られてきた。

 だいぶ弱ってるな。まぁ、当然か。

 「病気の再発なんて、絶対にさせないよ。来年も、その先も、結姫がずっと笑って過ごせる寿命をプレゼントするから」

 そうは言っても、カササギとの取引契約を話せば結姫に()らぬ心配をかける。

 だから『再発のことは気にする必要はない』とも言えない。

 勉強での疲労とか受験のプレッシャーもあるだろうし、不安にもなるよな。

 何とかしてあげたいけど……。

 「結姫が喜んでくれそうな場所、か」

 どこがあるだろう。

 結姫は、何を望んでただろうか。

 昔、僕が苦しんでた時に部屋へ投げ入れてくれた、行きたい場所が書かれた手紙を開く。

 クリスマスイブに綺麗な景色を見たい という文が目に入った。

 今までの結姫は、少しの気圧変化でも体調を崩してた。

 だからこその願いだろうけど、これも果たせなければ未練になるか。

 「(ちょう)()いいところを探さないと。結姫が喜びそうな、綺麗な景色……」

 スマホで検索をしていく。

 体調が悪くなった時に対処が難しかったり、埼玉を離れるのが制限されてた結姫だ。

 県外で新鮮な喜びも体験してもらえるような場所、ないかな。

 「あ、ここなら喜んでくれそうかな?」

 ああでもない、こうでもないとスマホの検索ウィンドウをいくつも開いたけど……。

 やっと喜んでくれそうな場所を見つけられた気がする。

 『探してみるから、ちょっと待ってて』

 返信をすると、すぐに『やった! 楽しみにしてる!』と返ってきた。

 写真や口コミだけで、行ったら残念だったら申し訳がない。

 先に一人で下見に行くとするか――。