誰と話すこともなく迎えた昼休み。

 騒がしい教室じゃなく、気楽に一人で食べられる体育館裏へとやってきた。

 「いただきます」

 おにぎりと卵焼き、少しの温野菜を自分で詰め込んだ弁当箱を開く。

 流れる雲を一人で見つめてると、今朝に輝明から声をかけられたことを思い出す。

 かつては仲良し四人組と呼ばれた――輝明や凛奈ちゃん。

 いつからだろう? 思わず呼び捨てじゃなくなるぐらい、距離が離れてた。

 成長するに従って、どうしても学内ヒエラルキーというものは無視できなくなる。

 陽キャ集団は上に立ち、僕みたいなのは大人しくしてるしかない。

 幼い頃に親しかったからって、成長して立場が代われば交流がなくなるのも当然だ。

 「……結姫なら、来年は輝明くんみたいな陽キャとも仲良くやってるかな。動けるようになったし、また凛奈ちゃんとも昔みたいに戻れるかも」

 思いを()せると、凄く馴染んだ。

 楽しそうに幼馴染みたちや友達に囲まれ笑う結姫の姿。

 いいな……。最高だ。その光景を、ぜひとも見たい。

 結姫が生きてるからには、取引継続の手数料は払えてるんだろうけど……。

 どこか、不安が(ぬぐ)えない。

 夜闇のような暗さと、瞬く星のように輝く生き方がカササギの求めているもの。

 それは聞いたけど、気になる部分もある。

 対価とは何か、カササギは僕自身が考えろと言った。

 ヒントは、『瓶の中の輝き』と『人の生き方を見るのが好き』という部分。

 瓶の中の輝きは、結姫の笑顔で合ってるだろう。合ってるはずだ。

 だけど人の生き方という部分が引っかかる。結姫が笑えるような生き方のサポート。

 僕の余命を差し出し、結姫の笑顔を最大限に取り戻す。

 本当に僕は――これだけしてれば、いいのだろうか?

 まるで嫌がらせのように詳細な答え を明言されなかったから、心配が消えない――。