買い物を終え、結姫の家へ一緒に入った。

 何だか、僕まで家族かのように錯覚する。

 「さて、それじゃ張りきって料理をしましょうか」

 「あ、僕も手伝いますよ」

 「優惺くん、無理しないでいいのよ? お客さんなんだから、ゆっくり座ってて」

 「何かしてないと落ち着かないので。それに家では、家事も自分でやってますから」

 僕は今の――ほぼ母さんが帰ってこないアパートで、一人暮らしのように家事をする自由な生活を気に入ってる。

 市川家みたく特別嬉しいことがない代わり、全て自己責任で嫌なことも少ないから。

 僕が高校受験に も失敗したことで絶望した母さんは、自分の実家 に帰った。

 ほぼアパートに来ないけど、僕が困らないように生活の支援や連絡はしてくれるから充分かな。

 心配したらしい祖父母からは、毎日のように生存確認の 連絡がくるしね。

 期待を裏切り続け家庭崩壊の原因になった僕を母さんが見放しても、仕方がない。

 「そう。高校一年生で家事までしてるなんて、やっぱり偉いわね」

 「いえ、最低限のことしかしてませんよ。それでも(した)(ごしら)えぐらいは手伝えますから」

 「惺くんがやるなら、私も手伝うよ! 洗い物と味見 は任せて!」

 宣言通り、結姫は僕たちが作るものをパクパクとつまみ食いした。

 結姫が好きな食べ物や味の様子をみながら、おばさんと料理を作っていく。

 結姫は途中から、おじさんと『退院祝い』と書いたバルーンを飾ってた。

 手持ち無沙汰だったのかな。

 「はい。できた料理から運ぶから、皆も手伝ってね~」

 おばさんが一声かけると、おじさんも結姫も飛んでくる。

 この素晴らしい光景も、カササギへの対価になってるかな?

 食卓へ並べ終えると、「退院おめでとう」と結姫へ祝って から食事に手をつける。

 「う~ん。()()しい! 九十八点!」

 「残り二点は?」

 「私が料理に参加してないとこかな!」

 「つまり実質、百点だね」

 結姫が満足してくれたから、僕も満足だ。

 この時間を永遠にするためにも――

 「――健康になった今、何がしたい? 何をしてほしい?」

 「惺くん、またそれ? 何をそんなに、(あせ)ってるの?」

 「……それぐらい真剣なんだ。本気で結姫に笑ってほしいんだよ」

 結姫は 僕が尋ねた言葉に首を傾げてたけど、君の命がかかってるんだ。

 変に思われても構わない。それだけ僕にとって大切なことだ。

 僕の気持ちが伝わったのか、結姫は鼻を触りながら考え込み

 「……正直ね、死んじゃうって確信した時、未練が頭にあったの。やりたくても病気のせいで、やれなかったこと」

 「今は自由にやれるようになったんだ。何でも言ってよ」

 「惺くんとね……。行きたかった所が、沢山あるんだ。でも、今の一番は別かな?」

 「今の一番は?」

 尋ねた僕の言葉に、結姫はニパッと笑い