ドクンと、心臓が音を立てた。

 ベッドの上で力なく横たわっていた結姫が、上体を起こして僕を見つめてる。

 不思議そうな表情をしている結姫に、ふらふらと近付き――手を握る。

 温かい?

 生きてる……。結姫は、生きてる。助かったんだ!

 忘れていた呼吸が、今さらのように荒く息を始めたのを感じた。

 「――結姫……っ! 助かって、良かった! 本当に、良かった!」

 「惺くん! 私、どんどん前が暗くなっていって……。惺くんの声も、(ぬく)もりも遠ざかっていってね……。怖かった! もう会えないのかって! 死んじゃうの、本当に怖かったよ!」

 「もう、大丈夫だから……。結姫は、大丈夫だから……」

 「ああ、神様っているんだね……。また惺くんに会えて、良かった!」

 喜ぶ結姫を、思わず抱きしめてた。

 ああ、間違いない。勝手に涙が溢れてくる……。

 結姫の命を示す脈が、トクントクンと一定のリズムで動いてる。

 結姫は、まるで奇跡のように――まさに奇跡で、命を取り戻した。

 医学的に、もう手はない。確実に最期の瞬間だった状況からだ。

 胡散臭いカササギという存在は、夢でも幻でもない。

 間違いなく、命の輝きすら譲渡できてしまう人外存在がいるんだ――。