あれは、夢だった?

 何もなかったかのように、外からは入間川七夕まつりの音が聞こえる。

 立ってる場所も、何も変わってない。

 まるで時が止まっていたかのようだ。

 全て嘘や幻の出来事だったとしたら……。

 いや、もしも本当だったならば!

 「――結姫!」

 気が付けば病室に向かい足が動いてた。

 エレベーターを待つ時間も惜しい!

 階段を駆け上がれ!

 結姫の命が助かってる可能性があるなら!

 あの不思議な世界が現実で、結姫が笑える可能性があるなら……。

 怖い。幻だったら、怖くて仕方ない。

 それでも可能性がゼロじゃなくなったなら、確かめなきゃ!

 「結姫、結姫……っ!」

 足が重い、肺が痛い、でも――立ち止まるな!

 病棟が、ザワついてる? (せわ)しなくスタッフが動いてる。

 結姫の病室の前に、多数のスタッフが詰めかけてるのが見えた。

 どういうことだ。まさか、今この瞬間に結姫の鼓動が消えかけてるのか!?

 「通して、すいません! 通してください!」

 人混みをかき分け、病室に入る。