――”また明日”
今日も明日もない光毅にとって、残酷な言葉を言ってしまったかもしれない。
そんなことを眠りにつく前に気付いた。独り善がり、僕の悪い癖だ。
そう、僕は僕のために言いたくて、光毅に伝えた。
生きていた光毅と会った最後の夜。いつも通り僕の家の前で別れ、光毅は自分の家に帰った。
あの日は、帰り際些細な口喧嘩をしてしまって。
きっかけなんて思い出せないくらい、よくある小競り合いで他愛のない物だったけど、拗ねた僕は『じゃあ』とだけいつも絶対に口にする言葉を言わずに別れた。
小さい時からのお約束。本当に会う会わない関わらず、光毅に”バイバイ”の代わりに言ってきた”また明日”。
なのに、その日に限って言わなかった――
今までずっと、後悔していた。素っ気ない態度が最後になるなんて。僕が言わなかった所為で光毅の明日は無くなったのか、なんて自虐が過ぎる事すら真剣に考えて、悩んで苦しんで涙した夜もある。
今日、やっと言えた。
光毅は僕の心を知ってか知らずか、受け止めてくれた。
相変わらず、今でも僕を気遣ってくれるなんて。光毅が甘やかして育てたから、僕はこんなに我儘になってしまった。
『人の所為にすんなよ』ってまた光毅に怒られるな。
だけど後悔と自己満足だけで言ったんじゃない。
「また明日、本当に会いたいよ、みつき」
横になり、光毅が消えた窓をみつめ、本音を口に出した。
今日はとても疲れた。窓が歪んでカーテンが滲んで見えてきたからもう寝よう。
幽霊も眠るのかな? 今度光毅に聞いてみたいな。もっと話したいことがたくさんあるんだ。
「おやすみ……」
僕はまどろみの中、髪にあの心地よさを感じながら、眠りに落ちた。
ーおしまいー