「あー、それな。達樹のお陰で来られた。精霊馬」
「せーれーば?」
「達樹、茄子に割りばしの脚つけて作ってくれただろ。あれに乗って来れるんだ」
「へえ……」
間抜けな返事しか出来ない。何故? どうして来たのか? ともっと壮大な疑問をなげかけたつもりなのに、まさかの交通手段の返事が来た。
しかもそれが光毅のおばさんに頼まれて作った本人の癖に、僕は意味さえ知らず、調べることもしなかった。
「お前、相変わらず不器用だな。右前脚長さ違ってるし、胴体がデカすぎだし、途中三回位落茄子したわ」
「らくなすって? らくばと同義語? ごめん、今も不器用なのは認める。だけど茄子が大きかったのは、光毅が好物だから喜ぶかなと思って」
「そういや俺、カレーは茄子が入ったの一番好きだった。よく覚えててくれたな」
「忘れないよ、何一つ……」
「有難う。今は俺にとって茄子は食い物じゃなく乗り物だけどな」
他人がこの光景を見たら信じられないだろうけど、二人で下らない話をした挙句、笑いあっている。