涙の誕生日は九月十七日、十五夜だからという理由で、いつのまにか近所の和菓子屋の月見団子を奢ってやるのが定番になっている。
ちなみに、涙はつぶあん、眩夢はこしあん派。
でも、いつも両方とも食べたくなって、二個ずつ買ってしまうことが多い。
眩夢の誕生日は十二月二十四日のクリスマスイブで、毎年涙はクリスマスプレゼントと称し、小物をくれる。だから、寒い冬だけど、眩夢は自分の生まれた季節が嫌いじゃなかった。
「男二人でケーキ屋っていうのも、悪くないな。」涙はフルーツタルト、眩夢はモンブラン、二人とも、月に数回食べる甘いものが、嫌いじゃなかった。
「そうだね。はいこれ、誕生日おめでとう。」
袋を開けてみると、ベージュの大きいサイズの手袋が入っていた。
「嬉しい。けどお前これ、高くなかった?」
「そんな野暮なこと聞かないでよ。伊達にコンビニでバイトしてないから。」
涙は今年の頭から、コンビニでアルバイトを初めた。嫌な客にいじめられてないか初めのうちはかなり心配した眩夢だったが、どうにか頑張っている涙を、見守ることしか出来なかった。
涙はもう、泣き虫涙くんじゃない。今も、茶色のコートを着て静かに紅茶を飲む姿は、どことなく大人びて見えて、眩夢の知ってる涙じゃないように感じる。
「お前、今年は誕生日って言ったな。毎年クリスマスって言ってプレゼントくれるのに。」
「えへへ、ちょっと素直になってみた。眩夢、生まれてきてくれて、ありがとう。」
涙の愛らしさに、眩夢は真顔になる。
「お前、口についてる」
眩夢がタルトのカケラを拭うと、涙の頬が赤らむ。
「あ、ありがと。」
照れる涙を見つめながら、眩夢の中の天秤が、均衡を保てずグラグラするのを感じた。
友達以上、ではある自覚はある。
ただ、長いこと幼馴染でいたせいで、一歩が踏み出せない。
眩夢の好きは、大きくなりすぎて天秤から溢れそうになってる。涙の好き、もそうだといいのに。
眩夢は涙に溺れてる。
手袋は、眩夢の手にぴったりで。
「シンデレラみたい.なんてくだらないよね。」
と、泣き虫王子は微笑んだ。
ちなみに、涙はつぶあん、眩夢はこしあん派。
でも、いつも両方とも食べたくなって、二個ずつ買ってしまうことが多い。
眩夢の誕生日は十二月二十四日のクリスマスイブで、毎年涙はクリスマスプレゼントと称し、小物をくれる。だから、寒い冬だけど、眩夢は自分の生まれた季節が嫌いじゃなかった。
「男二人でケーキ屋っていうのも、悪くないな。」涙はフルーツタルト、眩夢はモンブラン、二人とも、月に数回食べる甘いものが、嫌いじゃなかった。
「そうだね。はいこれ、誕生日おめでとう。」
袋を開けてみると、ベージュの大きいサイズの手袋が入っていた。
「嬉しい。けどお前これ、高くなかった?」
「そんな野暮なこと聞かないでよ。伊達にコンビニでバイトしてないから。」
涙は今年の頭から、コンビニでアルバイトを初めた。嫌な客にいじめられてないか初めのうちはかなり心配した眩夢だったが、どうにか頑張っている涙を、見守ることしか出来なかった。
涙はもう、泣き虫涙くんじゃない。今も、茶色のコートを着て静かに紅茶を飲む姿は、どことなく大人びて見えて、眩夢の知ってる涙じゃないように感じる。
「お前、今年は誕生日って言ったな。毎年クリスマスって言ってプレゼントくれるのに。」
「えへへ、ちょっと素直になってみた。眩夢、生まれてきてくれて、ありがとう。」
涙の愛らしさに、眩夢は真顔になる。
「お前、口についてる」
眩夢がタルトのカケラを拭うと、涙の頬が赤らむ。
「あ、ありがと。」
照れる涙を見つめながら、眩夢の中の天秤が、均衡を保てずグラグラするのを感じた。
友達以上、ではある自覚はある。
ただ、長いこと幼馴染でいたせいで、一歩が踏み出せない。
眩夢の好きは、大きくなりすぎて天秤から溢れそうになってる。涙の好き、もそうだといいのに。
眩夢は涙に溺れてる。
手袋は、眩夢の手にぴったりで。
「シンデレラみたい.なんてくだらないよね。」
と、泣き虫王子は微笑んだ。