「おめでとう御座います!特賞の遊園地ペア入場券です。」
運命がこっちに吹いてきた、と思った。
涙くん、という兄の親友がいるのは昔から知ってた。
涙と書いてルイくんなんて、素敵すぎる名前だな、というのが第一印象。
どんな人なの?ってきいたら、兄は少し考えて、超いい奴、とのこと。
兄が人を褒めるのをあんまりきかないから、興味は抱いた。
でも、自他共に認める超面食いの私のお眼鏡に適う人を探してきた人生だったから、まさか兄の親友がこんなに理想な人なんて。
体操服がぶかぶかなくらい華奢な体、栗色の髪はサラサラと秋風になびき、睫毛の長い大きな瞳で、兄をじっと見つめながら時折見せるくしゃっとした笑顔に、美しさを感じて、舞は鳥肌が立った。
「初めまして。愛陽舞です。兄がお世話になってます。」
「つ、月凍涙です。」
舞が何か言おうとすると、「次、競技だから。」と涙は運動場に行ってしまった。
その日はそれっきり、涙と話す機会はなかった。
それから舞は、涙のことをずっと考えていた。
ある日の夕食の時、意を決して、兄に宣言した。
「お兄ちゃん、私、運命の人に出会っちゃったから、応援してよね。」
「おー、良かったじゃん。応援するよ。俺の知ってる奴?」
「涙様。」
眩夢はゲボゲボと盛大にお茶をむせた。
「お前、本気か?てかなんで様付け、、、。」
「当たり前でしょ。お兄ちゃんの話だと、涙様彼女いないみたいだし。あんなカッコいい人に彼女がいないなんて、夢みたい。お兄ちゃん、応援してくれるよね?男に二言はないよね?」
「おぅ。」
そして、遊園地ペアチケット当選。
「お兄ちゃん、涙様を即刻デートに誘って!お兄ちゃんも着いてきていいから、自腹で。」
「お前なあ、、、。兄として、ついていくのは当然だから。写真撮ってやるよ。」
そして今日。涙様の顔が曇っているのは人見知りのせいだろう。
最初に乗ったのはコーヒーカップ。
「涙様、コーヒーカップは全力で回す派ですか、そのまま派ですか。」
「僕、コーヒーカップ乗るの初めてかも。」
「マジですか。私、全力で回す派なんで、そこんとこよろしくお願いします。お兄ちゃんも、隣のカップで全力で回しながら動画撮ってね。」
「任せろ。」
その結果、胃腸が繊細な涙は、コーヒーカップから降りるとすぐにトイレに駆け込み、眩夢が撮った動画は見てるだけでまた酔ってくるようなハードなカメラワークだった。
「大丈夫ですか涙様。次は涙様に何が何でも絶対に乗ってほしいナンバーワン、メリーゴーランドです。白馬に乗った涙様、素敵すぎる。お兄ちゃん、下手くそだから撮影係クビ。涙様の白馬の後ろのゴンドラにでも乗ったら。」
それから、舞は自分は乗り物に乗らず、涙の写真を撮ることに全力をつくし、後から見返しても、涙がメリーゴーランドで微笑んだり、ジェットコースターでびびったりする喜怒哀楽を綺麗に切り取っていた。
「眩夢、どうして僕も一番前に乗せたのさ。超怖かったよ。」
「ずっと俺にしがみついてたもんな。可愛いかったよ、泣き虫涙くん。」
「うるさい。またその嫌な呼び方する。」
涙が眩夢をぽかぽか叩く。
「ごめん、ごめんって。」
涙と眩夢がイチャイチャしている間、舞はずっと撮った写真をトリミング加工していた。
そして、夕日指す夕方、絶好の絶景観覧車チャンスに、舞の美しい涙を撮りたいという血が騒いだ。
「涙様を至近距離で撮影するために、さすがに今回は私が涙様とゴンドラに乗るわ。お兄ちゃんも次のゴンドラに、、、」
「いや、今回は外で待ってるわ。それはそうと、お前、涙に告白するのか?付き合ってくれって、絶対言うって昨日から言ってたから。」
舞の顔が真っ赤に染まったが、夕日のせいだと心の中で言い訳した。
「わ、私、今日一日でわかったの。確かに涙様は優しくてかっこいい理想の人だけど、崇拝する対象で、付き合うなんて恐れ多い。それに、、、」
舞は眩夢の右耳にゴニョゴニョと囁いたら、今度は眩夢が夕日のせいで赤くなった。
「私は、お兄ちゃんと涙様を応援してます。え、なんで赤くなるの?変なお兄ちゃん。」
「涙様、少し急用ができて、私帰らないと行けなくて。もう少しで観覧車から綺麗な夕日が見えるベストタイミングなので、私の愚兄と、乗ってあげてください。ではまた。」
涙が驚いて、照れたように笑う。
「ありがとう。舞ちゃん、またね。」
それを見ながら舞は、愛されるより、愛したいし、涙様への感情はライクなんだなー、と気がついた。
でも、大好きな人には幸せになってもらいたい。仲良さげに話している、涙と兄眩夢を、祈るように見つめてから、舞は立ち去った。
運命がこっちに吹いてきた、と思った。
涙くん、という兄の親友がいるのは昔から知ってた。
涙と書いてルイくんなんて、素敵すぎる名前だな、というのが第一印象。
どんな人なの?ってきいたら、兄は少し考えて、超いい奴、とのこと。
兄が人を褒めるのをあんまりきかないから、興味は抱いた。
でも、自他共に認める超面食いの私のお眼鏡に適う人を探してきた人生だったから、まさか兄の親友がこんなに理想な人なんて。
体操服がぶかぶかなくらい華奢な体、栗色の髪はサラサラと秋風になびき、睫毛の長い大きな瞳で、兄をじっと見つめながら時折見せるくしゃっとした笑顔に、美しさを感じて、舞は鳥肌が立った。
「初めまして。愛陽舞です。兄がお世話になってます。」
「つ、月凍涙です。」
舞が何か言おうとすると、「次、競技だから。」と涙は運動場に行ってしまった。
その日はそれっきり、涙と話す機会はなかった。
それから舞は、涙のことをずっと考えていた。
ある日の夕食の時、意を決して、兄に宣言した。
「お兄ちゃん、私、運命の人に出会っちゃったから、応援してよね。」
「おー、良かったじゃん。応援するよ。俺の知ってる奴?」
「涙様。」
眩夢はゲボゲボと盛大にお茶をむせた。
「お前、本気か?てかなんで様付け、、、。」
「当たり前でしょ。お兄ちゃんの話だと、涙様彼女いないみたいだし。あんなカッコいい人に彼女がいないなんて、夢みたい。お兄ちゃん、応援してくれるよね?男に二言はないよね?」
「おぅ。」
そして、遊園地ペアチケット当選。
「お兄ちゃん、涙様を即刻デートに誘って!お兄ちゃんも着いてきていいから、自腹で。」
「お前なあ、、、。兄として、ついていくのは当然だから。写真撮ってやるよ。」
そして今日。涙様の顔が曇っているのは人見知りのせいだろう。
最初に乗ったのはコーヒーカップ。
「涙様、コーヒーカップは全力で回す派ですか、そのまま派ですか。」
「僕、コーヒーカップ乗るの初めてかも。」
「マジですか。私、全力で回す派なんで、そこんとこよろしくお願いします。お兄ちゃんも、隣のカップで全力で回しながら動画撮ってね。」
「任せろ。」
その結果、胃腸が繊細な涙は、コーヒーカップから降りるとすぐにトイレに駆け込み、眩夢が撮った動画は見てるだけでまた酔ってくるようなハードなカメラワークだった。
「大丈夫ですか涙様。次は涙様に何が何でも絶対に乗ってほしいナンバーワン、メリーゴーランドです。白馬に乗った涙様、素敵すぎる。お兄ちゃん、下手くそだから撮影係クビ。涙様の白馬の後ろのゴンドラにでも乗ったら。」
それから、舞は自分は乗り物に乗らず、涙の写真を撮ることに全力をつくし、後から見返しても、涙がメリーゴーランドで微笑んだり、ジェットコースターでびびったりする喜怒哀楽を綺麗に切り取っていた。
「眩夢、どうして僕も一番前に乗せたのさ。超怖かったよ。」
「ずっと俺にしがみついてたもんな。可愛いかったよ、泣き虫涙くん。」
「うるさい。またその嫌な呼び方する。」
涙が眩夢をぽかぽか叩く。
「ごめん、ごめんって。」
涙と眩夢がイチャイチャしている間、舞はずっと撮った写真をトリミング加工していた。
そして、夕日指す夕方、絶好の絶景観覧車チャンスに、舞の美しい涙を撮りたいという血が騒いだ。
「涙様を至近距離で撮影するために、さすがに今回は私が涙様とゴンドラに乗るわ。お兄ちゃんも次のゴンドラに、、、」
「いや、今回は外で待ってるわ。それはそうと、お前、涙に告白するのか?付き合ってくれって、絶対言うって昨日から言ってたから。」
舞の顔が真っ赤に染まったが、夕日のせいだと心の中で言い訳した。
「わ、私、今日一日でわかったの。確かに涙様は優しくてかっこいい理想の人だけど、崇拝する対象で、付き合うなんて恐れ多い。それに、、、」
舞は眩夢の右耳にゴニョゴニョと囁いたら、今度は眩夢が夕日のせいで赤くなった。
「私は、お兄ちゃんと涙様を応援してます。え、なんで赤くなるの?変なお兄ちゃん。」
「涙様、少し急用ができて、私帰らないと行けなくて。もう少しで観覧車から綺麗な夕日が見えるベストタイミングなので、私の愚兄と、乗ってあげてください。ではまた。」
涙が驚いて、照れたように笑う。
「ありがとう。舞ちゃん、またね。」
それを見ながら舞は、愛されるより、愛したいし、涙様への感情はライクなんだなー、と気がついた。
でも、大好きな人には幸せになってもらいたい。仲良さげに話している、涙と兄眩夢を、祈るように見つめてから、舞は立ち去った。